『現代紀行文学全集・第四巻「西日本篇」』(修道社) ヴァラエティがたのしい 評者:杉森久英 「週刊読書人」1958(昭和33)年5月26日号|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

  1. 読書人トップ
  2. 特集
  3. 読書人アーカイブス
  4. 文学
  5. 『現代紀行文学全集・第四巻「西日本篇」』(修道社) ヴァラエティがたのしい 評者:杉森久英 「週刊読書人」1958(昭和33)年5月26日号
読書人アーカイブス
更新日:2020年2月16日 / 新聞掲載日:-0001年11月30日(第226号)

『現代紀行文学全集・第四巻「西日本篇」』(修道社)
ヴァラエティがたのしい
評者:杉森久英 「週刊読書人」1958(昭和33)年5月26日号

このエントリーをはてなブックマークに追加
この題名にはすこしウソがある。紀行文学の全集というけれど、文学者の紀行文ばかりで、政治家や科学者などのものは、はいっていない。

また、純粋な紀行文ばかりとかぎっていない。志賀直哉氏の「城の崎にて」を紀行というのはすこしコジツケみたいだし、和辻哲郎氏の「京の四季」は、十年住んだ京都から東京へ移って、あたらしい眼で京都の風物をしのんだもの。これを紀行文学というのも、すこし苦しい。

しかし、そういうことはたいしたことではない。要するに、その土地土地に関係ある文学者の文章をあつめたものと、気楽に解釈すれば、なかなかおもしろいものを集めてある。室生犀星氏が京都へ旅行して、うまれてはじめてラジオ放送というものをする、処女のようにドギマギした気持ちは、放送局というものは全国にあって、京都という土地とは無関係だけれど文学者らしい人をくったかまわなさ、素朴さと、そして神経のかよった文字で書かれている。

中村光夫氏が「暗夜行路」の尾道をたずねて博覧会の何とか館といった朱塗りのお寺にネオンがつくのを、土地の人が自慢にしているといって苦笑いしているのも、中村氏らしい批評眼だが、芥川竜之介が松江へいって、たくさんある木の橋を、新時代の鉄橋にしない土地の人の奥ゆかしさをたたえているが、これみんな鉄にする費用が大変だからにすぎないと気のつかないノンキさも、大正文人らしい超俗ぶりである。反対に、柳田国男氏の「熊野路の旅」の、目にうつるものことごとくに、百科全書的な意味と脈絡を発見する、ギッチリ実がつまったような、本格的な紀行文もある。そのヴァラエティがたのしい。(すぎもり・ひさひで=文芸評論家)

『現代紀行文学全集・第四巻「西日本篇」』(B6判・四三七頁・四八〇円・修道社)

このエントリーをはてなブックマークに追加
読書人アーカイブスのその他の記事
読書人アーカイブスをもっと見る >
文学関連記事
文学の関連記事をもっと見る >