ハーバート・リード著/田中幸穂訳『散文論』(みすず書房) 語感と鑑識力養う 評者:安藤一郎 「週刊読書人」1958(昭和33)年5月26日号|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2020年2月16日 / 新聞掲載日:-0001年11月30日(第226号)

ハーバート・リード著/田中幸穂訳『散文論』(みすず書房)
語感と鑑識力養う
評者:安藤一郎 「週刊読書人」1958(昭和33)年5月26日号

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原題は『英国散文論』(The English Prose Style)で一九二八年に出ているから、やはり同年の『詩についての八章』と共に、ハーバート・リードの初期における労作の一つである。

全体を二部に分けて、第一部は「作文」で、語・形容語・隠喩と他の比喩語法・文・パラグラフ・配置の六章、語の機能とそれにたいする感覚を主としている。散文のリズムは、形式よりも、作者の思想から出るものである、というのは卓見である。第二部は「修辞」で、解説・物語・幻想・想像・印象主義・表現主義・雄弁といった種々の創造における心理的傾向と文体の関係を分析した上で、「内的統一」ということを強調している。リードの分析と普遍化は、例のように、極めて行届いたものでその態度も真摯であるが、そこに非常に新しい創見があるとはいいがたい。しかし、私たちは、これによって、詩と散文の区別、あるいは語感とか、よい文章にたいする鑑識力とかをみずから涵養することができるだろう。

この書は、全体の殆んど半分以上が、古今の著作から引用された文章に当てられて、実例を示していることに意義がある。だから、ほんとうは、そういう英文の抜粋を読む力がないと、実際の面白味がない――ということは、直接にリードの原書にぶつからなければならないのである。それにも拘わらず、これを翻訳し、数多い引用の原文をそのまま留め、かつそれに一々訳文を加えるという、大きな煩労をいとわなかった訳者の忍耐に敬意を表する。(あんどう・いちろう=東京外国語大学教授・イギリス文学専攻、詩人)

ハーバート・リード著/田中幸穂訳『散文論』(A5判・三八二頁・九五〇円・みすず書房)
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