連載 今日における映画の扱われ方   ジャン・ドゥーシェ氏に聞く 142|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く
更新日:2020年2月22日 / 新聞掲載日:2020年2月21日(第3328号)

連載 今日における映画の扱われ方   ジャン・ドゥーシェ氏に聞く 142

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2010年頃、ポルトガルで(「到着した巨匠」と掲示板にある)
HK 
 『ハウス・ジャック・ビルト』の洞窟のシーンは、Go Proという小型カメラで撮影されたと考えられます。ドキュメンタリーの『リヴァイアサン』などで用いられていますが、他の映画の中では、まだまともに使用されていません。
JD 
 トリアーの使用法が特別なものだったとは思いません。その種のテクノロジーは、いずれ誰かが驚くような使い方を発見するはずです。そして、それに応じるようにして、映画も新しい形へと変わっていきます。キューブリックや他の映画作家が行なったようにして、新しい発明は映画につきものです。新しいテクノロジーには常に開かれていなければいけません。
HK 
 その同じエピローグにおいて、絵画を再現したようなショットもありました。 
JD 
 それはドラクロワの『地獄のダンテとウェルギリウス』です。悪くない再現でした(笑)。
HK 
 ゴダールが以前似たようなことをしていました。
JD 
 もちろん。『ゴダールのパッション』などですね。
HK 
 そうなのですが、それ以上にビル・ヴィオラの近年の作品に近いと感じました。その後も、最近のファンタジー映画を思い出させる映像があり、まるで現代の映画をまとめて見ているようでした。
JD 
 本物の芸術家なら、当然のように、彼の生きている時代に対して敏感でなければいけない。さもなければ、面白い作品など作れるはずもない。いずれにせよ、トリアーは簡単な映画監督ではありません。彼の映画が十分に理解されるためには、まだまだ時間が必要です。
HK 
 つい先日、ポンピドゥセンターでソヴィエトの映画を見る機会がありました。エスター・ショブという監督なのですがご存知でしょうか。
JD 
 ロシアのドキュメンタリーの監督ですね。彼女の作品は昔見た覚えがあります。
HK 
 レーニンの時代の女性映画監督で、元々は編集技師でした。一九二七年にはロマノフ王朝についての映画を作っています。映画史において、初めてアーカイブから映画を作った人だとも耳にしました。
JD 
 そうだったかもしれません。作品はいかがでしたか。
HK 
 上映した作品は『コムソモール―電気技師長』という作品でした。ジガ・ヴェルトフのトーキーの時代を思い出しました。しかし、非常に重要な作品だとは思いません。
JD 
 ロシアの映画作家には、エイゼンシュタイン、バルネット、ドヴジェンコがいただけです。
HK 
 プドフキンもいました。
JD 
 当然彼もいます。しかし私は、それほど彼の作品が好きではありません。
HK 
 プドフキンの映画は、物語を語る面が非常に強くあると思います。僕の記憶ではドゥーシェさんは一九六三年に「愛する芸」の中で、ルネ・クレールとまとめて偽の名声として非難していました(笑)。
JD 
 私がそのようなことを書いていましたか。今でも間違ってないと思います。プドフキンは、ある面ではアメリカ映画のようにして、物語を語っています。しかしながら、その当時のソヴィエトが持っていた理論と調和していません。ただ、長年にわたり、ルネ・クレールのようにして、彼こそが優れた映画作家だとみなされていました。それでも面白いものだとは思いません。そのようには思いませんか。
HK 
 ええ。おそらくですが、ルネ・クレールと同様に、取り扱っている題材が「知的」だと見なされるものだったのだと思います。「知的な映画」というものが何を指すのかよくわからないのですが。ルノワールは知的ではなくて、クレールは知的とされていたのですよね。
JD 
 そうです。そのような言い回しをしていた人々は、「知的」だと言うだけで満足していただけです。映画など見る気は全くなかった。
HK 
 ソヴィエトの映画監督といえば、他にもプロタザノフ、カウフマンなどもいました。
JD 
 もちろん。のちの時代になれば、タルコフスキー、パラジャーノフ、ソクーロフといった映画監督たちもいます。ロシア映画は、映画史における最も重要なものの一つでした。

   〈次号へつづく〉
(聞き手=久保宏樹/写真提供=シネマテーク・ブルゴーニュ)
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