アーサー王伝説研究  中世から現代まで 書評|渡邉 浩司(中央大学出版部)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2020年2月29日 / 新聞掲載日:2020年2月28日(第3329号)

アーサー王伝説研究  中世から現代まで 書評
アーサー王伝説が作り出す万華鏡
多様で豊饒な世界を探求する五部構成の論集

アーサー王伝説研究  中世から現代まで
編集者:渡邉 浩司
出版社:中央大学出版部
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 編著者の渡邉浩司氏を主査とする、中央大学人文科学研究所「アーサー王伝説研究」チームの五部構成の論文集である。

第一部は、イタリアとフランスの図像表現を考察する。金沢百枝氏は、北イタリア・モデナ大聖堂扉口上部の浮彫を、巨人によるアーサー王妃の誘拐と王による救出場面とし、時代背景(十字軍)を考慮して、王妃の救出=エルサレムの救済と捉えている。増山暁子氏は北イタリアの諸城のうち、ハルトマン・フォン・アウエ『イーヴェイン』の場面を描くロデンゴ城の壁画のほか、ロンコロ城、マンタ城、マントヴァ公ゴンザガ家の城の解説に蘊蓄を傾ける。渡邉浩司氏の紹介するフランス・イゼール県テッス城の壁画は、クレティアン・ド・トロワの語る「ペルスヴァルの幼少年期」を描いた貴重な作例である。

第二部は中世フランスとイタリアの作品群。横山安由美氏はロベール・ド・ボロンの『聖杯由来の物語』と『メルラン』に取り組み、「聖なるもの」を教会の側ではなく、世俗世界・騎士社会の側に位置付ける意図をもっていたと解釈する。クレティアン・ド・トロワ『フィロメーナ』とその受容を論じる村山いくみ氏は、古代神話の伝承と解釈の様相を解明する。中世イタリアの『円卓物語』をテーマにする狩野晃一氏の論考は、日本の研究者に向けて本邦で未紹介の分野を開拓したといえるだろう。

第三部は中世ドイツ・北欧・イギリスの作品群。白木和美氏はウルリヒ・フォン・ツァツィクホーフェン『ランツェレト』の巧みな構成を再評価した。『ブリタニア列王史』のアイスランド語翻案『ブリトン人のサガ』に焦点を当てた林邦彦氏は北欧文学特有の個性を摘出している。多ヶ谷有子氏はアーサー王妃と建礼門院の晩年を考察し、両者の贖罪と祈り、菩提の弔いの本質を明らかにする。

第四部は騎士ガウェインの諸相。貝塚泰幸氏はイギリス文学『サー・ガウェインとカーライルのカール』における、馬に対する慈愛に満ちた態度に主人公の美質を捉え、玉川明日美氏は『サー・ガウェインと緑の騎士』のキーワード「価値」の分析をとおして、他者からの干渉を通じ主人公が自我を確立する様を描く。松原文氏はヴォルフラム・フォン・エッシェンバハ『パルチヴァール』のなかの副主人公ガーヴァーンについて考究し、彼が見せる自律性と自由に注目した。ナタリア・ペトロフスカイア氏は中世ウェールズ文学のガウェイン(グワルフマイ)に焦点を当て、アーサー王宮廷の「親衛隊長」としての彼の役割を重視している。

第五部は近現代の文学と映画。近藤まりあ氏は、スタインベックが『アーサーの死』の翻案において、残酷で邪悪な魔女を不幸な女性へと変える経緯を跡付ける。伊藤洋司氏は、ブレッソン映画『湖のランスロ』に描かれる、終わりゆく騎士と王妃の不倫の愛の場面を、「騎士道世界の崩壊と死の物語の重要な一側面」と解釈する。篠田知和基氏は、グラックがワーグナー『パルジファル』に触発されて書いた小説『アルゴールの城にて』と戯曲『漁夫王』の作る不思議な世界に入り込み、両作の結末に「この世における『救いの拒否』」を見ている。

アーサー王伝説が、多種多様な地域・時代・ジャンルにわたって産みだした豊饒な世界、その諸方面に探求の斧を入れた十六個の論攷、それらが作り出す万華鏡を楽しむことができる今の私たちは幸せである。
この記事の中でご紹介した本
アーサー王伝説研究  中世から現代まで/中央大学出版部
アーサー王伝説研究  中世から現代まで
編集者:渡邉 浩司
出版社:中央大学出版部
「アーサー王伝説研究  中世から現代まで」は以下からご購入できます
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