インスピレーションは波間から 自然の教えを知る、シーカヤック地球紀行 書評|平田 毅(めるくまーる)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2020年2月29日 / 新聞掲載日:2020年2月28日(第3329号)

インスピレーションは波間から 自然の教えを知る、シーカヤック地球紀行 書評
「真剣勝負の自然との対話」の旅
カヤックを履いて、カヤックと一体化し海洋生物と化す

インスピレーションは波間から 自然の教えを知る、シーカヤック地球紀行
著 者:平田 毅
出版社:めるくまーる
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 カヌーとカヤックの違いをご存じだろうか。人が漕いで移動する小舟の総称がカヌーで、その中でも人間が乗り込む座席部分だけがオープンとなっているクローズドデッキ、かつ左右両側の櫂で漕ぐダブルパドルタイプのものをカヤックと言うそうだ。カヤックは、水辺や沿岸航行用で、海仕様がシーカヤックとなる。折りたたみ式のものもある。著者はプロのシーカヤッカーで、折りたたみ式のシーカヤックとともに、彼のテーマである「求心的な旅と遠心的な旅」をする。前者の旅は日本、後者は海外――フィジーのカンダブ島、南インド、タンザニアのザンジバル島、アンダマンのニコバル諸島――が目的地である。そしてその体験と、独自の思いを綴った紀行文が本書である。

著者は、カヤックは通常は「乗る」と言うが、むしろパンツや靴と同じように「履く」と言う方が相応しいとする。カヤックを履いた著者は、カヤックと一体化し海洋生物と化す。カヤックがクローズドデッキで、身体にフィットさせて艇に入り込むがゆえに、物理的にも一体化である。さらに五感を研ぎ澄まして海洋を漕ぎ進む著者は、水との、自然との一体感を実感する。そこには音楽も介在する。カヤックは楽器のようなもので、自然や地球に対して敏感に反応する。因って、海を行くことは音楽的な体験となる。不思議なことに、パドルで漕ぐ著者の躍動感が、躍動感そのものとして読者に伝わってくる。水のエネルギーやしぶき、カヤッカーの筋肉の緊張と弛緩や汗まで感じられる。

訪れた先々の自然環境が描写される。しかし、自然の諸事実に関する記述は、長々とは続かない。その後には、まず自然に対する著者の感応が綴られる。さらには、それは自然についての哲学的考察にまで発展し、著者独自の世界観、自然観が展開する。著者は自分自身のことを学者ではなく、冒険者、アウトドアガイド、一人の生活者と呼び、「このチャーミングな感覚を心底楽しめばいい」と書き添えているが、語られる独自の世界観、自然観には、読後大いに魅かれるものがある。

「21世紀は環境の世紀、自然との共生を何より尊ぶ時代になるだろう」という件が繰り返される。秘境の島を訪れ、持続可能な生き方が何千年も続けられるだろうと言いつつも、エコツーリズム等の外部からの侵入があればすぐにも崩壊するだろうと懸念を示している。人間も自然の一部、「人間のまま生態系の一員として、パズルのピース」となって、冒険の旅を続けたいと締めくくっている。著者の旅は、「真剣勝負の自然との対話」の旅である。

このところ、「ブルー・ヒュマニティーズ(Blue Humanities)」という言葉で表現される、海洋表象や海に纏わる文学、絵画、音楽等の研究に関心が高まっている。平田氏の一冊は、この現象に一石を投じ、刺激を与える一冊となりうる作品であろう。
この記事の中でご紹介した本
インスピレーションは波間から 自然の教えを知る、シーカヤック地球紀行/めるくまーる
インスピレーションは波間から 自然の教えを知る、シーカヤック地球紀行
著 者:平田 毅
出版社:めるくまーる
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