ビールの自然誌 書評|ロブ・デサール(勁草書房)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

読書人紙面掲載 書評
更新日:2020年3月7日 / 新聞掲載日:2020年3月6日(第3330号)

ビールの自然誌 書評
博覧強記、完璧な一冊
文化史からその技術、ビールの系統まで

ビールの自然誌
著 者:ロブ・デサール、イアン・タッタソール
翻訳者:ニキ リンコ、三中 信宏
出版社:勁草書房
このエントリーをはてなブックマークに追加
 「日本酒という輝かしい伝統がありながら、現代の日本で最も広く飲まれているアルコール飲料はラガースタイルのビールである。なかでも多いのが、「ドライ」といって、一九八〇年代にアサヒビールが開発した技術をもちい、麦汁の中の複合糖類を分解した製品だ。この操作により複合糖類もアルコールに転換できるので、最終的には西洋の類似品に比べてアルコール度数が高く、私たちに言わせれば風味が薄めのビールができあがる」。

という話からはじまり、サラリーマンの帰宅前に飲み屋でビールを一杯(あるいは、二杯、三杯)という話。それが古い規範が崩れ、ソーシャルメディアの影響云々、あるいは一九九四年に法律が変わって、クラフトビールシーンが誕生し……というような記述が続く。

この手の本、まずは自分がよく知っている文化、あるいは地域について書かれている部分を見てみるに限る。それで、レベルが分かる。というわけで、日本のビール事情についての一節を見てみて、続けてオーストラリアやベトナムやらについて書かれているあたりを見て、唸った。完璧だ。

「××の文化誌」、あるいは「自然誌」というタイトルの本ほど、ややこしいものはない。興味をそそられるものが多いけれど、玉石混淆。文科理科バランス良くプロの本というのがなかなかない。難しい。

で、とりあえずは自分がよく知っているような項目からチェックしてみたらよろしいのではということなのだけど、この日本の項のみならず、文化史的なこと、あるいはホップや酵母のような技術的なこと、そして、ビールの系統のような話まで、まあ、博覧強記というのかしら。バランスよく、真っ当な、希有な本だと思われました。はい。

その起源が日持ちのする粥というか、すぐには腐らない「液体のパン」というか。そのあたりの古代文明での話は、まあ、食を飯のタネにしているという商売柄、それなりに知ってはいたが、なるほど、こういうことだったかと納得する。

大麦や酵母、ホップについて、あるいは発酵についての説明も、文化誌を越えて懇切丁寧。なるほど、なるほど……。

ビールの世界では、マイケル・ジャクソンというスーパースターと同名ということでも知られた、泰斗がいた。書籍だけでなく、BBCが制作したドキュメンタリーは日本でも放送されているので、ご存じの向きも多いのではないか。その泰斗とは違うアプローチで、素晴らしい本を書いてくれたものだと思う。分子生物学者と古生物学者という、ちょっと信じられない組み合わせで。

そうそう。この二人なら、ワインについても、いわゆるワイン関係者とは違うアプローチで面白い本を書いてくれるはず。そう思ったら、すでに書いていた。ただ、日本語版が(まだ)でていない。出してくれないものか。いや、出ないほうがネタ本としては(笑)?
この記事の中でご紹介した本
ビールの自然誌/勁草書房
ビールの自然誌
著 者:ロブ・デサール、イアン・タッタソール
翻訳者:ニキ リンコ、三中 信宏
出版社:勁草書房
「ビールの自然誌」は以下からご購入できます
「ビールの自然誌」出版社のホームページはこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加
森枝 卓士 氏の関連記事
読書人紙面掲載 書評のその他の記事
読書人紙面掲載 書評をもっと見る >
人生・生活 > 食・料理関連記事
食・料理の関連記事をもっと見る >