夢みる教養 書評|小平 麻衣子(河出書房新社 )|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
更新日:2020年3月7日 / 新聞掲載日:2020年3月6日(第3330号)

小平麻衣子著『夢みる教養』

夢みる教養
著 者:小平 麻衣子
出版社:河出書房新社
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 「あの人には教養がある」といった言葉はごく普通に使われる言い回しだが、さて、ここでいわれる「教養」とは一体どんなものなのだろう。殊に、女性にとっての教養とはどのように語られているか、そして女性に求められる教養とはどのような形をしているか。

自分で起こしたこの問いに対し、真っ先に芸術や文学、料理や手芸などが思い浮かび、それらは「女子力」という言葉に変換された。なぜ私は、女性の教養についてこのようなイメージを抱えているのだろう。「教養」という言葉が男性を対象としたときに、これと同じように考えられるだろうか。違うとすればなぜ、性別によって「教養」の意味が変わってしまうのだろうか。こうした疑問に、本書は答えてくれる。

本書は戦前からの「教養」という概念の変遷とともに、文系を中心とした教養と女性の関係について、史実や文学作品などから見ていくものである。

まず目についたのは、キャッチーな章タイトルであった。例えば、大衆の中での教養と女性の関係について書かれた第四章の「差別するにはまず女性を活用すべし」や、太宰治の『女生徒』と、作品の元となった実在する女性の日記との比較から、女性作家の表現の制限について書かれる第六章の「〈文学少女〉はいない」といった、女性を卑下するようにも見える皮肉な言葉に興味を惹かれ、次の章へ、次の章へとページをめくった。

しかし、親しみやすいタイトルに内包された本文には、教育や教養にまつわり、女性たちが現在までに受けてきた差別の歴史、そこから考察される差別の要因が、わかりやすく語られると共に、著者自身が感じる理不尽さへの憤りをも感じさせられた。

教養が持つ意味の変遷は、女性への差別の歴史と密接しており、女性と教養の関係を考えていく中で、けして目を背けることはできないだろう。

著者が結びに語った、教養的規範がもたらす、現代における女性への差別についても留意したい。確かに現代の女性は、本書に書かれているかつての女性たちに比べれば、進路の選択肢や男性同様の教養を学べる機会を「与え」られてはいるが、現状をつぶさにみれば、医学部入試での配点操作や、エビデンスが見込まれない「女性脳」「男性脳」というような概念によって、学問における得意不得意がまことしやかに語られるなど、性別による差別は社会にあふれている。このような差別を明白にするには、過去を見つめることが得策なのではないだろうか。

現に本書では、これまでの女性と教養の歴史に対して向き合うことでその格差を浮き彫りにしている。現在では常識とされている考え方が過去にどういった経緯で形成されたのかを知り、そこに差別があったのであればこれからの未来に向けてどう改めていくのかを考えていくことこそが重要なのである。そう感じずにはいられない。
この記事の中でご紹介した本
夢みる教養/河出書房新社
夢みる教養
著 者:小平 麻衣子
出版社:河出書房新社
「夢みる教養」は以下からご購入できます
「夢みる教養」出版社のホームページはこちら
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