One last hug 命を捜す 書評|岩波 友紀(青幻舎)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2020年3月7日 / 新聞掲載日:2020年3月6日(第3330号)

One last hug 命を捜す 書評
親と子の、無念の思い
災害のすさまじさと捜査活動の困難さを物語る写真の数々

One last hug 命を捜す
著 者:岩波 友紀
出版社:青幻舎
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One last hug 命を捜す(岩波 友紀)青幻舎
One last hug 命を捜す
岩波 友紀
青幻舎
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 二千五百三十二人。これは、警察庁が二〇一九年六月時点でまとめた、東日本大震災による行方不明者の人数である。

二〇一一年三月十一日の震災発生後、同月末時点の行方不明者は一万七千人を超えた。その後、無事が確認されたり、同じ人が二重に届け出られていたケースも判明したりして、行方不明者は同年五月で一万人、七月段階では五千人となった。懸命の捜索が続けられた結果、二〇一二年の大震災一周年時点で行方不明者は三千百五十五人、二〇一三年の二周年では二千六百六十八人となった。しかしその後、行方不明者の捜索は困難をきわめるようになる。大震災発生八周年を迎えた二〇一九年で、それまでの一年間に見つかった行方不明者は、わずか六人にとどまった。

その結果、起きたことは、行方不明者に関する新聞記事やテレビニュースの減少である。これを、〝風化〟と言う。そんないまだからこそ、この写真集は私たちに、忘れてはならないものがあることを教えてくれる。

本書は、津波で我が子が行方不明となった三人の父親にスポットをあてたフォト・ルポルタージュである。それまでの仕事を辞めて、当時小二の長男、琴さんを捜し続ける宮城県石巻市の長沼勝さん。両親と長女を亡くし、長男の倖太郎さん(当時三歳)が行方不明となった福島県南相馬市の上野敬幸さん。それに福島県大熊町で父と妻を亡くし、当時小一の次女、夕凪さんの捜索を続ける木村紀夫さん。いずれの場所でも時間がたつにつれ、捜索の人手は減って行く。未曽有の原発事故が発生した福島では、行方不明者の捜索もままならない。

捜索で発見された子どもたちの着衣やランドセル、泥にまみれた鍵盤ハーモニカなどの写真が、子どもたちの元気な姿を偲ばせて胸を打つ。災害後の捜索現場では、真っ白なマスクが真っ黒に染まる。こうしたモノクロ写真の数々が、災害のすさまじさと捜索活動の困難さを如実に物語る。後半になると、カラー写真が多用される。それは歳月の経過を示すと同時に、わが子の姿はいつまでも色あせないという、親の思いのように感じられた。

巻末では、慰霊祭における木村さんの言葉が紹介されている。

「人にとって命が一番大切なもののはずなのに、リスクを冒して裕福な生活を手に入れたり、他人にリスクを負わせて、その上であぐらをかいていたり、さらには、そのリスクにさえ気づかない人がいます。おかげで、あなたたちを捜すこともできず、ほったらかしにしておくしかありませんでした。あなたたちはそれを見て、天国で苦笑いしていることと思います。怒る気にもなれないでしょう」

親と子の、無念の思いが、この写真集に詰まっている。
この記事の中でご紹介した本
One last hug 命を捜す/青幻舎
One last hug 命を捜す
著 者:岩波 友紀
出版社:青幻舎
「One last hug 命を捜す」は以下からご購入できます
「One last hug 命を捜す」出版社のホームページはこちら
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