縄文ルネサンス 現代社会が発見する新しい縄文 書評|古谷 嘉章(平凡社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2020年3月7日 / 新聞掲載日:2020年3月6日(第3330号)

縄文ルネサンス 現代社会が発見する新しい縄文 書評
いまの時代の人々にとって縄文とは何か
縄文ルネサンスの実像と基底にある潮流を読み取る

縄文ルネサンス 現代社会が発見する新しい縄文
著 者:古谷 嘉章
出版社:平凡社
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 縄文ルネサンスは、日本人と縄文との関係のあり方を大きく変えようとする転換期であり、二〇〇〇年頃から始まり、多種多様な社会現象を生み出している。それは短期間のブームではなく、長い時間のなかで、文化史的なスパンでみるべき事象である。このように考える著者が、江戸時代の好事家たちから最近の縄文と現代アートの出会いまでを通観し、いまの時代に生きる人々にとって縄文とは何か、そこにどのような意味を見い出し、それをどのように生かそうとしているのか、を俯瞰する。本書では、この約二十年間に行われた数多くの縄文時代に関する展示やイベントについて解説し、縄文ルネサンスの実像を浮かび上がらせるとともに、その基底にある潮流を読み取ろうとする。

古谷氏は、縄文ルネサンスのなかで形成されてきた縄文時代のイメージとして、「自然との共生」「持続可能な社会」、「戦争のない平和」、「階級なき平等社会」の四つを挙げ、それは現代の日本や世界に対する人びとの問題意識と関わりがあると考える。つまり、現代文明が抱える「自然とのバランスの喪失」、「持続困難な社会」、「開戦直前状況」、「不平等な階級社会」という問題に対処するために別の生き方を探したとき、その有力候補として縄文が浮上してきたというわけである。それが、本書の第四章のタイトルのように「縄文を活かして現代社会を変える」運動につながるのであろう。本書で解説される北海道・北東北の縄文遺跡群の世界文化遺産登録活動、信濃川流域の火焔型土器のクニ復興運動のいずれにも「自然との共生」「持続可能な社会」などのイメージが見え隠れしている。

第五章「縄文と現代アートの交錯」、第六章「ポピュラーカルチャーと海外発信」に挙げられた多数の事例はこの十年ぐらいのものであり、いかに急激な変化であったのかを改めで感じさせる。とくに、土偶はたちまちその主役の座についた。本書の補足をすれば、二〇一一年と二〇一二年に、新潟県立歴史博物館、栃木県立博物館、当時の北海道開拓記念館、岩手県立博物館、MIHO MUSEUMと立て続けに土偶展が開催されたことも、こうした状況に大きな影響を与えたといえるだろう。ともあれ、それらの活動はまさにリゾーム状で系統立てて整理することは困難である。しかしながら、こうした活動が、縄文時代から残されたモノと現代アートを掛け合わせることによって残らなかった何かを想起させる試みである、という著者の指摘は大変興味深い。一方、考古学者は縄文時代の資料を現代の技術や理論で分析し、見えなくなった縄文時代の人びとや社会を語ろうとする。現代アートと考古学には共通点がある、と思う。

評者は考古学者で、「土偶・コスモス」展を担当し、秋田県の世界遺産登録活動に協力し、関西の現代アート作家と共同で展示やイベントを開催してきた。「縄文ルネサンス」の当事者にとり、本書は自分を相対化するきっかけを与えてくれる書でもある。
この記事の中でご紹介した本
縄文ルネサンス 現代社会が発見する新しい縄文/平凡社
縄文ルネサンス 現代社会が発見する新しい縄文
著 者:古谷 嘉章
出版社:平凡社
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