連続と断絶 ホワイトヘッドの哲学 書評|飯盛 元章(人文書院 )|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2020年3月14日 / 新聞掲載日:2020年3月13日(第3331号)

連続と断絶 ホワイトヘッドの哲学 書評
ホワイトヘッド哲学の断絶的なテーマを探り出す
ドキュメンタリー番組のように展開する議論

連続と断絶 ホワイトヘッドの哲学
著 者:飯盛 元章
出版社:人文書院
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 就職してしまった。やっちまった。なんとか委員とか、なんとか委員とか、あとは、なんとか委員とか。会議ばっかり。だから、ほとんどホワイトヘッドを読めていない。私自身ホワイトヘッドを読むのを、ある時期から飽きてしまっていたこともあるのだが、それでもなお、気になっていたのは確かだ。このままだとホワイトヘッドについての論文やら文章やらが日本語環境で誰も書かなくなっちゃったらどうしようかと不安にもなっていた。だけども、カイネ・ゾルゲ(し〜んぱぁい、ないさぁ〜 by大西ライオン)!

そう、世界では、ひっそりと、あるいは着実にホワイトヘッドが読まれている。従来の宗教哲学の文脈ではもちろんのこと、ドゥルーズとの繋がりで読まれていることもあれば、はたまたデジタル・ヒューマニティーズの文脈であったり、アーティヴィズム(art & activism)、そして思弁的実在論の流れの中など、枚挙にいとまがない。とりわけ思弁的実在論の文脈では、ラトゥール(厳密には思弁的実在論ではないが、ここではその文脈にあるとしておこう)やステンゲルス(私は何度も指摘しているが、彼女は「スタンジェール」ではない)、そしてその影響を受けたハーマンたちがホワイトヘッドを頻繁に参照し、彼ら・彼女らの持論を展開する上で、ホワイトヘッドが読まれている。ハーマンは思弁的実在論の流れの中でも、オブジェクト指向存在論(Oriented Object Ontology)を提唱しており、その中で、OOOと同様に、森羅万象を同じ存在論的な地平で見渡すことができる理論としてホワイトヘッドを読解している。

本書は、そうした世界のひそみに習いながら、着実にホワイトヘッドとハーマンを読み、議論が展開されている。とりわけハーマンが論じる諸事物の断絶に着想を得た上で、ホワイトヘッドの哲学における断絶的なテーマを探り出すことに目的がある。ホワイトヘッドの議論はしばしば連続性や関係性の哲学的理論として語られるのであるが、ハーマンがそうしたように、対象の退隠(ハイデガー由来)にこそリアリティ(ここでは思弁的実在論者たちが用いる「実在」を意味しているわけではない)があるといった点が探求されていく。

空間的(延長的)な連続性を語るホワイトヘッドは、抱握(prehensionの訳語)によって、宇宙の全てと関係を有し、生成消滅していく。それを踏まえた上で本書では、同時的なものとは断絶しているというホワイトヘッドの議論を通じて、連続しているこの宇宙の中の個物における因果的な独立性を見出していく。それに加え、時間的にも、常識的には連続性が担保されつつも、それぞれの個物が個物として独立しているというリアリティが論じられていくことに本書のドキュメンタリー的な面白さが際立つ。

ちょっと、本稿を閉じる前に、思うところも継ぎ足したい。思弁的実在論の多くの論者は、断絶を述べたてていくのであるが、その理由が、いまだ私の頭の中では理解し切れていないことが多い。メイヤスーならば、いきなり完全な神様が現れて、死者の復活をなすようなことがあるかもしれないという徹底した(あるいは極端な)偶然性をぶち上げるので、救済してくれているような感覚には一応、なる。しかしハーマンはなぜ断絶を述べ立てるのかがいまいちよくわからない。その上で、本書でも、ホワイトヘッドの中になぜ断絶を見出そうとするのか、その動機がいったいいかなるものなのか、本書を読む限りでは明らかではない。もちろん、私は、誰とも心の底からは連帯しないし、アナキストたるもの、孤独なので、断絶そのものはお好みなのだけれども。断絶の契機を見出そうとすればするほど、逆説的にホワイトヘッドがまさに連帯の哲学なのであるということが浮き彫りになった気もする。むしろそれが本書の狙いだったのだろうか。いずれにせよ、ドキュメンタリー番組を見るかのような、面白い読書体験であったのは間違いない。拙著『具体性の哲学』(以文社)とあわせて読まないと不幸になります。以上。
この記事の中でご紹介した本
連続と断絶 ホワイトヘッドの哲学/人文書院
連続と断絶 ホワイトヘッドの哲学
著 者:飯盛 元章
出版社:人文書院
「連続と断絶 ホワイトヘッドの哲学」は以下からご購入できます
「連続と断絶 ホワイトヘッドの哲学」出版社のホームページはこちら
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