橋爪大三郎氏/内田樹氏 インタビュー 69年5月、駒場900番教室の記憶 映画『三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実』公開を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2020年3月13日 / 新聞掲載日:2020年3月13日(第3331号)

橋爪大三郎氏/内田樹氏 インタビュー
69年5月、駒場900番教室の記憶
映画『三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実』公開を機に

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第3回
「非合法の暴力」を肯定する三島が抱えていたもの

橋爪 大三郎氏
――三島は討論会の中で、「非合法の暴力」を肯定していました。しかも、自決を仄めかすようなことを言っている。映画を見る多くの人は、三島の最期を知りながら、この言葉を聞くことになりますが、当時あの場で聞いたとき、何か思うところはありましたか。
橋爪 
 三島がまさか本気で自決するとは、誰も思っていなかったでしょうね。三島が映画に出演したり、ファッションにこだわったりしていたのは、「見せる」ための部分が大きかったはずです。だから、「非合法の暴力」といったセリフを聞いても、ハッタリや強がりの一種で、本当は別のことを考えている。そう思ってやり過ごし、安心して聞いていたのではないか。でも三島は、冗談ではなく、それなりに本気だった。と言うか、最後に実行行為に及んだから、本気だったことになった。三島が予言めいたことを言っていたとしても、それが本当に予言だったのか、誰にもわかりません。迷いもあったと思います。ただ三島は、暗示めいたことを言いながら、だんだんのっぴきならない場所に自分を追い込んで行ったことは確かだと思います。

三島が市ヶ谷の自衛隊のバルコニーから演説する様子は、TVで報じられました。自決したことに、誰もが驚きました。私もそれなりのショックは受けました。芥さんは討論をした当事者ですから、もっと重く受け止めたはずです。考え方は違っても、相手への敬意があったでしょうから。

――討論会の三島は、どこか楽しそうにも見えます。千人の〈暴力学生〉の中に飛び込んで、「討論するぞ!」という感じではありませんよね。
橋爪 
 三島は、自分が本気で言っているのに周りがそう受け止めないという、疎外や孤立の感覚をずっと持ち続けていた人間です。そこで、真逆の立場の暴力学生だとしても、本気で何かをしている連中なら、話が合うかもしれない。通じるところがあるかもしれないと思って、あの討論の場にやって来たのでしょう。全共闘は、非合法に活動することを、是としている集団です。権力側とまともに話し合っても埒があかないことは、医学部のインターン問題でよくわかっていた。だから、言いたいことがあれば、直接暴力に訴えることも厭わない。権力をものともせず、筋を通すためなら非合法な手段で主張する。

三島はそれを、いいなと思った。「自分を偽らずに、自分の考える道を進む。それが文学であり、文化であり、政治も本来はそうあるべきだ。私は、文学でそれをしている。」と、彼は思っていたからです。三島は全共闘の学生たちを仲間だと思いたいし、思ってもいた。だから、楽しそうに見えるのでしょう。
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