生きづらいこの世界で、アメリカ文学を読もう カポーティ、ギンズバーグからメルヴィル、ディキンスンまで 書評|堀内 正規(小鳥遊書房 )|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2020年3月21日 / 新聞掲載日:2020年3月20日(第3332号)

生きづらいこの世界で、アメリカ文学を読もう カポーティ、ギンズバーグからメルヴィル、ディキンスンまで 書評
みんな違うけど同じ、 というスタンス
「自己」を背負いつつ、日々、差異を生きる

生きづらいこの世界で、アメリカ文学を読もう カポーティ、ギンズバーグからメルヴィル、ディキンスンまで
著 者:堀内 正規
出版社:小鳥遊書房
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 作家・芸術家というのは、どうしてこうも生きにくい存在なのか。彼らの作品を繙く度に、そう実感させられる。だが、考えるまでもなく、私たちも皆、彼(女)らと相通じる数々の問題や苦悩に直面し、それとどうにかこうにか折り合いをつけながら毎日を生きている。ただ、それを厳密に意識化したり、言説化したりすることが少ないだけだ。本書で取り上げられている作家・小説家(カポーティ、フォークナー、メルヴィル、ポー、ホーソーン、ソロー)、詩人(ギンズバーグ、ブコウスキー、ホイットマン、ディキンスン)、歌手・作詞家(ディラン、リード)、そして映画監督(ジャームッシュ)もまた、なかなか一筋縄では行かないそれぞれの人生と向き合い、ぎりぎりの可能性の中で各自の生き方を模索・表現しようとしている。そして、そうした営為は例外なく、悲嘆、抵抗といった感情と関係している。つまり、すべてが必ずしも平穏な結果に導かれるわけではないということだ。

彼らが身の内に感じている抵抗感や懊悩感は、それぞれ多様であり、それぞれ皆違う。確かに違う。だが、それでもなお、作家・芸術家はそれを真摯に受け止め、表現することで、周りの「他者」たちに確実にメッセージを送り届けている。そこには、何ものにも屈しない強靭な信念の表明もあれば、自分の弱さを率直に告白する言明もある。そうしたメッセージを「他者」がどう受け止めるかはもちろん自由だ。だが、『遠い声 遠い部屋』のジョエルのように、「誰でもが、他者から愛されたい」と願い、また「誰もが弱い存在である、或いは弱い者になり得る、そういう意味で同じ人間なのだ」と考えることにも、極めて重要な意味がある。人はそれぞれ違う。だが、どこかでは結局、同じ人間なのだ。

本書では、「他者」への思考が的確に表明されている。人はそれぞれ皆違う。そして、それを表現し、主張するのが作家・芸術家の使命とも思われる。例えば、「どうしても一体化できない他者の波動を全身に浴びるプロセスが、ディランのライヴの体験である」ように。だが同時に、この「他者」は自分自身の内でも密かに揺動している。例えば、ポーの小説の主人公たちのように、「常に人間は盲点を内側に持っていて、自己を所有することができない」。つまり、私たちは、自分と違う人たちとの間だけではなく、自分自身との間にも、常に「差異」を抱え込んでいるのだ。

だが、ここで閑却してならないのは、先のジョエルに関する説明にあった「同じ人間なのだ」という一言であろう。人はどう揺らぐかも知れぬ「自己」(「内的差異」)を背負いながら、日々、周りの人たちとの差異を生きている。だが、それは誰にとっても同じことだ。実を言うと、これについては、本書の「はじめに」で著者自身が明確に宣言している。「わたしのスタンスは、〔……〕人間が生きるということには共通のことがある、と考えようとするところにあるのですが。みんな違ってみんないい、というのではなく、みんな違うけど同じだよね、というのがたぶん本書のスタンスです」。「生きづらいこの世界」で、今、本書が一人でも多くの読者に恵まれることを願いたい。
この記事の中でご紹介した本
生きづらいこの世界で、アメリカ文学を読もう カポーティ、ギンズバーグからメルヴィル、ディキンスンまで/小鳥遊書房
生きづらいこの世界で、アメリカ文学を読もう カポーティ、ギンズバーグからメルヴィル、ディキンスンまで
著 者:堀内 正規
出版社:小鳥遊書房
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