佐々涼子インタビュー  生きるということ、幸せの拠り所  『エンド・オブ・ライフ』(集英社インターナショナル)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2020年3月21日 / 新聞掲載日:2020年3月20日(第3332号)

佐々涼子インタビュー
生きるということ、幸せの拠り所
『エンド・オブ・ライフ』(集英社インターナショナル)刊行を機に

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第3回
覚悟の重み、逝く人からの贈り物

佐々 涼子氏
――森下敬子さんの娘さんたちは、お母さんが最後までその生き方を通して伝え続けた、「幸せでいる方法」を知っている。これは何より、この世界を生き抜く極意なのではないかと思いました。余命わずかな息子を在宅で看護した男性が、最後に父親の顔をしていた、という話もありましたね。亡くなる人は必ず贈り物を遺していくのだと。
佐々 
 森山さんは、「人に腹を立てたり、悲しんだりしている時間は、僕にはないんですよ」とよくいっていました。私は腹が立ってどうしても許せない人が、二、三人いて(笑)、頭にその人が浮かぶたびにイライラしていたんです。でもこの本を書いてから、怒りが無くなった。森山さんがもっていってくれたのかな。それは、私にとって森山さんからの贈り物の一つです。

この本は闘病記ですが、病気や死について書いているのではない気がします。人が生きることの基本や、幸せになる方法について、教えてもらったことを丸めてしまわずに、なるべくそのまま、その人たちの言葉が伝わるように書こうと思っていました。

――人の生理はけしてきれいなものではないのですが、佐々さんのお母様を介護する、お父様の手際が正しく美しくて、摘便や口腔ケアも、読んでいて心地よいほどでした。でも佐々さんの中には、お母様に生きていてほしいという気持ちと同時に高度先進医療に対する葛藤や、家族だからこその痛みもあったのではないかと想像します。

胃ろうや移植など、生き延びる選択肢があるとして、それによって人間らしい生活を奪われる可能性もある。どこまで西洋医学にすがるか、という問いもありました。お母様のことも森山さんのことも、それは当事者が悩み抜いて辿り着いた結論ですが、「命に覚悟を持つ」とはどういうことなのだと思われますか。
佐々 
 それはその場に立ってみなければけして分からないことですよね。マスコミは表層的にまとめて、延命の良し悪しを話題にしがちです。でも一人一人身体の状態も違うし、家族や環境も違う、人生観も違えば、医療との付合い方も違います。延命治療に対する唯一の答えなどあるはずがない。でも一つの型に押し込められ、是非論に押し切られている気がするんです。

死に方は一人一人違っていいし、どんな結果になるかは最後まで誰にも分からない。この本を七年かけて書いて、分からないということが分かった、というところでしょうか。

森山さんは西洋医学に精通していましたから、最後まで高度先進医療を受けて、できる限り延命するという選択肢もあったはずですが、闘病の末「もっと恰好よく逝きたかった」と悔しがりながらも、セデーション(鎮静)を選択した。

これから先、私もどんな体で生きていくことになるのか、そのときにどう受け止め何を考えるのか、それは予断を許さない状況です。ただ、森山さんのような専門家にとってさえ、その時にならないと分からないということが分かったし、迷っても、途中で選択を変えてもいいということが分かった。

でもそのとき、先に逝った人の生き方が力を貸してくれるのではないかと思っています。亡くなる方たちはとても大事な学びの瞬間を与えてくれました。誰かの選択について私がどうこういうことはできないし、それぞれの決断があってそれぞれでいい。誰にとっても一度限りの人生で、後悔しても戻るわけにはいかないですから、そのそれぞれの決断を学ばせてもらう。そういうつもりで書かせてもらいました。
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この記事の中でご紹介した本
エンド・オブ・ライフ/集英社インターナショナル
エンド・オブ・ライフ
著 者:佐々 涼子
出版社:集英社インターナショナル
「エンド・オブ・ライフ」は以下からご購入できます
「エンド・オブ・ライフ」出版社のホームページはこちら
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