整形した女は幸せになっているのか 書評|北条 かや(講談社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
更新日:2020年3月28日 / 新聞掲載日:2020年3月27日(第3333号)

北条かや著『整形した女は幸せになっているのか』

整形した女は幸せになっているのか
著 者:北条 かや
出版社:講談社
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 高校生の頃、通学中に知らない人から「おい、ブス」と声をかけられた。相手は同年代くらいの異性だったと思う。何も言い返せず、悔しくてべそをかきながら学校に行った、苦い思い出だ。

その経験から、私は本書を手に取った。世の中顔が全てだという言説の真偽はいかがなものなのか。一方で、人は見た目じゃないともいわれる。その真実を知りたい人は、多いのではないか。

近年、整形は日本の若者にとってカジュアルなものになりつつある。Twitterには「整形垢」と呼ばれる美容整形経験のある女性たちのアカウントが存在し、YouTubeでは整形アイドルが人気を博している。ある女優が昨年テレビ番組で整形を公にしたのも記憶に新しい。

整形とは彼女達にとってどんな意味を持つ行為なのだろう。表紙に大きく書かれているように、女性を幸せにしてくれるものなのか。私はその答えを求めてページを開いた。

本書は五つの章から構成されており、推定規模二〇〇〇億円にものぼる整形市場が多方面から捉えられている。例えば第二章で「それぞれのダウンタイムストーリー」として語られる、美容整形を行った女性達の体験談は非常に興味深い。施術を行った理由や環境は三者三様だが、いずれも自らを高める行為として整形を利用している。

また、第四章には自らの整形体験を一冊の本にまとめ上げた作家・中村うさぎへのロングインタビューが収められている。ここでは整形で得た美を失う恐怖や老いとの闘いが描かれ、その壮絶さはまさに「地獄」だ。

その他にも先行研究の検討や、岡崎京子が美容整形をテーマに描いた漫画「ヘルタースケルター」の批評などを通し、社会学の俊英である著者が現代社会の美をめぐる欲望に切り込んでゆく。

本書を読むまで、私は整形には断固反対だった。傷のない顔にメスを入れるという行為や、目に一番見える部分が変化するという事が自然の摂理に反すると感じたからだ。

著者はそういった整形批判を行う人を、「思考停止状態」と批評する。整形市場は今、大きく変わりつつある。そこから目をそらすのは、実にもったいない、と。

「綺麗になるために努力して、何がいけないの?」

これは自身の整形に何千万という費用をつぎ込む女性、ヴァニラの言葉だ。シンプルながらもハッとさせられた。整形の事をよく知らずに嫌悪し、一線を引いていた自分がとても恥ずかしかった。私達が考えねばならないのは「整形の善悪」ではない。その向こう側にある、「整形を行う根底にあるものの正体」だ。

顔は自分の物でありながら、他者の評価に大きく左右される。その評価こそが見た目の本質といっても良いかもしれない。美の基準はいつだって自分の外側にある。

それゆえ多くの女性達が誰かの発言に傷つけられたり悩んだりするのだ。

本書はそうした「他者に翻弄される苦しみ」から解放され、幸福を手に入れるヒントを教えてくれる。私達はもっと貪欲に自分の欲望を追求してもいいのではないだろうか。

その一つの手段として整形を選ぶのも、また別の方法を模索するのも個人の自由だ。

著者はあえて、整形を肯定も否定もしていない。答えはひとりひとりの倫理観と価値観に委ねられており、彼女は、ただまっすぐ読者に問いかけてくる。

いま、あなたは幸せですか?
この記事の中でご紹介した本
整形した女は幸せになっているのか/講談社
整形した女は幸せになっているのか
著 者:北条 かや
出版社:講談社
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