伊藤比呂美×町田康『Web新小説』創刊記念 「パンク山頭火・スペシャルトークと朗読ナイト」|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

トピック
更新日:2020年3月27日 / 新聞掲載日:2020年3月27日(第3333号)

伊藤比呂美×町田康『Web新小説』創刊記念
「パンク山頭火・スペシャルトークと朗読ナイト」

このエントリーをはてなブックマークに追加
町田康氏㊧、伊藤比呂美氏
一月十六日、春陽堂書店のマンスリー文芸マガジン『Web新小説』創刊を記念して、神保町・出版クラブホールで、詩人・作家の伊藤比呂美氏と、作家・ミュージシャンの町田康氏によるトークイベントが開催された。

朗読パフォーマンスで町田氏が、種田山頭火がロシア語から翻訳したツルゲーネフの「けむり」(明治四四年)を詩情豊かに朗読すると、伊藤氏は「素晴らしいですね。素晴らしいのがツルゲーネフなのか、山頭火なのか、町田さんなのか」と評し、山頭火の『一草庵日記』から昭和十五年十月八日の記述を朗読した。「私はこのために『行乞記』とかいろんなものを読んで、もう読んでも読んでも山頭火(笑)。日記としてはもちろん面白くて、毎日どういうふうに行乞したか、この宿はいいとか誰に会ったとか何を食べたとか漬物がおいしいとかまた飲んだとかさらに飲んだとかそんなことが書いてあって、今朗読した日記は「手がふるへる」という言葉で終わっていて、おそらくそのあと倒れたんでしょうね」と話した。日記はこの日付で終わって、山頭火は三日後の十月十一日に亡くなっている。

トークセッションでは、「山頭火の流行るときは、人間が反省するとき、時代が反省するとき」(町田)という観点から、時代の考察や生き方への憧れ、さらには山頭火の本質に迫るトークが繰り広げられた。

伊藤 
山頭火は『行乞記』で自分のことを「瘋癲」「ルンペン」と言っている。フーテンの寅さんの『男はつらいよ』が始まったのも七〇年代。
町田 
あるときに何かを捨てるというか、物質的な価値観じゃないんだよみたいな。バブルが弾けた後の反省というか、七〇年代のときとは感じが違うけど、山頭火的な価値観みたいなのに縋りたくなるのではないか。
伊藤 
『行乞記』を読んでとにかく感動するのは、山頭火が見ている風景、その自然がものすごくきれいなこと。一行読むたびにああこれはもうないなと。ああいうものに憧れる気持ちが今あると思う。
町田 
でも、山頭火の根底ってそんなんかなあと。
伊藤 
どこでもとにかく酒飲みたい。行乞で得た一銭二銭で酒買って飲んでる。
町田 
晩年の日記に「無駄に無駄を重ねたような一生だった」と書いていて、いきなり核心の話になるが、山頭火は結局人間の気持ちの本質、風呂好きで、酒好きで。
伊藤 
酒好き、漬物が好き(笑)。
町田 
日記を読んでいると「ああ、焼酎は嫌だ。日本酒が飲みたい」みたいな。この人はもともと家が裕福だったのが父親の代で没落する。本人としては文学で身を立てようとして立てられなかったみたいなものがある。

    *

その後も、俳句を革新していこうとした山頭火の俳句論について対話が交わされ、伊藤氏は自分の体験と山頭火の俳句が繋がった瞬間があったとして次のように述べた。「熊本にいると一日四回くらい犬を連れて外に出てずっと歩いてる。この夏はずっと烏瓜を探して歩いていたが、そうしたら山頭火に「藪で赤いは烏瓜」という句があった。これを読んだときに、山頭火と私がしゅっと繋がった」。

トークの終盤で町田氏は、「山頭火って特殊な人だと全然思えなくて、実は結構普通の人だと思う。人間として普通の人。そういう人がこれだけの仕事をすることが面白い。僕はここに普通を見たくて、山頭火の評伝も書いたものを読んでも、それは俺と一緒やんけという気もしてきて意外に普通の人なんだと。その普通の人がすることが実は面白くて、だから小説に書く」と語った。

      (おわり)

*町田氏は、『Web新小説』で現在「寺子屋山頭火」を連載中。 
Web新小説:https://shinshosetsu.com/
このエントリーをはてなブックマークに追加
町田 康 氏の関連記事
伊藤 比呂美 氏の関連記事
トピックのその他の記事
トピックをもっと見る >
ビジネス・経済 > 出版関連記事
出版の関連記事をもっと見る >