風が強く吹いている 書評|三浦 しをん(新潮社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
更新日:2020年4月4日

風が強く吹いている

風が強く吹いている
著 者:三浦 しをん
出版社:新潮社
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三浦しをん、彼女の名は、あまり本を読まない私でも知っていた。ただ有名な小説家だということ、最初の情報量はそれだけだった。そんな私が何故本書を読んだのか。

きっかけは、二〇一八年十月から日本テレビ系列で放送されていたテレビアニメ『風が強く吹いている』だった、私はそのアニメに夢中になってしまったのだ。
その後で、原作が小説であることを知った。小説ではアニメで描かれていた様々な場面が、どんな風に描写されているのだろう、その興味から本を購入してみると、あっという間に読み切ってしまった。

主人公は二人、ハイジとカケルという大学生だ。高校時代に暴力事件を起こし、駅伝から遠ざかっていた才能溢れるカケルと偶然出会うハイジ。そんなカケルをハイジは格安学生寮に誘う。そこには個性溢れる八人の学生が住んでいた。カケルとハイジを合わせて十人。そしてハイジは全員に告げる、「ここに居る十人で箱根駅伝を目指す」…と。

箱根駅伝、誰もがよく知るイベントだろう。例年正月の二日間に亘って行われる大学駅伝の競技会だ。私も毎年欠かさず見ている。襷を繋ぐために全力で走る選手たち、脚本も演出も何もないはずが、毎年違ったドラマや感動が生まれる。

この物語はそんな箱根駅伝を舞台にした青春小説である。


本書の見所は何よりも主要登場人物十人である。主人公のハイジやカケルは勿論、他のメンバーまで。全員がとても魅力のあるキャラクターなのだ。二年間浪人、加えて二年間留年をしているヘビースモーカーのニコチャン、司法試験に一発合格した秀才ユキ、クイズ番組が大好きな就活生キング、田舎育ちの好青年神堂、国費留学生のムサ、漫画オタクの王子、元サッカー部の双子ジョータとジョージ。初めは乗り気ではなかった部員が、だんだん駅伝に対して真剣になっていく。その背景に注目してほしい。ある者は家族のために、ある者は過去の自分のために、そしてある者は皆のために。無我夢中で箱根を駆け抜けることになるのだ。

私には最も心に残った台詞がある。

「俺は知りたいんだ。走るってどういうことなのか」

これは主人公であるハイジの台詞だ。カケルに対し「走るのが好きか」と尋ねた後に放った台詞である。走るとはどういうことなのか。私はこの問いをとても難しく感じた。そもそも「走ること」について深く考えたことは一度もない。それは私が駅伝を経験したことがないからかもしれない。しかし、経験していたとしても難しい問いだと思う。この場面でハイジはどんな答えを欲していたのか。「楽しいから走る!」なんて安易な答えが欲しかったわけではないだろう。走ることは一体なんなのか。この問いは解決することができるのだろうか。

「学生時代」「青春」という言葉を聞いて思い浮かべるものは何だろう。恋愛、文化祭、修学旅行。沢山の行事や印象深いエピソードがあるはずだ。その中で私は迷わず部活動と答える。恋愛もお祭りごとも旅行も大人になってから味わえるものだ。しかし部活動は違う。部室があって、顧問がいて、部員がいて……学生時代だからこそできる活動なのだ。時には笑い合い、喧嘩もし、涙を流す。彼らの絆を見て、部活に一生懸命打ち込んでいたあの日の気持ちが蘇った。
彼らが本気で走り抜いた青春を、是非手に取って見届けてほしい。
この記事の中でご紹介した本
風が強く吹いている/新潮社
風が強く吹いている
著 者:三浦 しをん
出版社:新潮社
「風が強く吹いている」は以下からご購入できます
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