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American Picture Book Review
更新日:2020年4月3日 / 新聞掲載日:2020年4月3日(第3334号)

「マックスと追いかけてくる月」

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『Max and the Tag-Along Moon』
Floyd Cooper著・画 
(Puffin Books)
ニューヨークは新型コロナウイルスの急激な感染拡大により、3月12日からのロックダウン(都市封鎖)が続いている。食料品店や薬局など必須業務店舗のみが営業を続け、他は閉店。学校はもちろん休校。市長は「家に留まるように」を繰り返している。

とはいえ、完全封鎖は不可能だ。食料の買い出しはせねばならない。健康と精神衛生を維持するための散歩やジョギングといった運動も許可され、ただし「他者と180センチ離れて行うこと」とされている。

感染者数は日々驚くべきペースで増え続けている。3月29日の時点でニューヨーク市内だけで33,000人を超え、死者は776人。この数字も明日にはまた更新され、やがて桁数すら増すのだろう。

ロックダウンの今、大病院の周囲には検査を待つ人が長蛇の列をなし、内部では医師、看護師が自身の命を賭けての救命処置を続けている。マスクも術衣も人工呼吸器も不足している。州知事は「4~8割の人が感染し、ロックダウンは最長9ヶ月続く可能性がある」と語った。これらはすべて3月1日にニューヨーク初の感染者が発覚してから、わずか1ヶ月以内で起こったことだ。

人々は日々刻々と変わる状況を知るためにニュースを確認し続けなければならないが、すでに疲れ果てている。時にはネットを遮断し、室内での運動なり、読書なりをしなければ身が持たない。

異変を感じているのは小さな子供たちも同じだ。幼稚園や学校に行かなくていいのはなぜ? どうして家族全員が毎日家にいるの? こんな時こそ、ごく当たり前の静かな生活を丹念に描いた絵本を読み聞かせたい。

本作は幼い少年と祖父の絆を満月を介して綴っている。ドラマチックなことは何も起こらないが、読後にしみじみとした感情に満たされる。マックスがおじいちゃんの家を出た時、空には柔らかな黄色い光をにじませる大きな月があった。おじいちゃんはマックスをぎゅうっとハグして「あの月は君のためにずっと輝き続けるんだよ」と言った。両親が運転する車に乗ったマックスが車の窓から夜空を見るたびに、月はそこにあった。道中、月はずっと、ずっとマックスを追いかけてきた。

なのに雲が出てきて、家に着いた時には月はすっかり隠れてしまった。ベッドに横たわったマックスはおじいちゃんが恋しくて眠れない。ところが雲が切れ、月の柔らかな黄色い光がマックスの寝室を満たした。マックスはおじいちゃんを思いながら、満ち足りた眠りについたのだった。

ロックダウンの今、どの子供もおじいちゃんに会いには行けないし、ハグもさせてもらえない。けれど3週間前までの平穏な生活は、いつか必ず戻ってくる。(どうもと・かおる=NY在住ライター)
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