40人の神経科学者に脳のいちばん面白いところを聞いてみた 書評|デイヴィッド・J.リンデン(河出書房新社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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図書館発!こんな本が面白い
更新日:2020年4月3日 / 新聞掲載日:2020年4月3日(第3334号)

神経科学者達から表現される科学的探究の熱量

40人の神経科学者に脳のいちばん面白いところを聞いてみた
著 者:デイヴィッド・J.リンデン
翻訳者:岩坂 彰
出版社:河出書房新社
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本書は、「脳の働きについて世の中に向けて何か話すとしたら、いちばん語りたいことって何?」をテーマに編著者であるデイヴィッド・J・リンデン氏が仲間の神経科学者に問いかけを行い、その結果が集約された40人の思いが綴られたエッセイ集の全訳である。編著者自身も神経科学者であり、『脳はいいかげんにできている』『快感回路』『触れることの科学』(いずれも河出書房新社発行)の著者で、これまで神経科学という専門領域を一般読者にもわかりやすい形で語ってきている。

編著者による冒頭記述の「科学者というのは、自分の仕事について語るときに細部をおろそかにしないよう訓練されている。私が同僚の神経科学者と話すときには、お酒を飲みながらにしたいと思うのはそのせいだ。」といったような意識から、フランクな形で神経科学者に問いかけることで最新の実験結果等の細部の記述に特化しすぎない一般読者にも取っつきやすいエッセイ集が形成されている。加えて、「私の意図は決して神経科学全体をカバーする簡易版の教科書を作ることではなかった。」と述べているように、本書は神経科学全体を体系的に学ぶために作られているのではなく、執筆陣が語る領域は幅広いが、それぞれの一番伝えたい内容が語られている。「日々生まれ変わる10代の脳」「眼は見るべきものを見る」「意識的行動も大部分は習慣」「助け合いは動物の本能」「ドーパミン意思決定に近づくAI」というようにエッセイの一部を切り出しただけでも変化に富み、語り口も様々で飽きさせない。気になるお話のみピックアップしても読み物として楽しめる。とはいえ私のような神経科学自体に縁がない人間には全く予備知識がない状態で本書を読み進めるのは敷居が高く感じるが、第1話「神経科学の基礎知識」に細胞レベルの神経科学に関するエッセンスの説明があり、一般読者向けの配慮もなされている。

私が特に印象に残ったエッセイは第15話「視覚は超能力」。人間の持つ視覚という能力がいかに優秀で異常なのか、視覚以外は同程度の能力を持つ異星人にこの能力を説明するユーモアを含む書き出しで始まる。眼のレンズで光子を受け取る仕組みまでは説明できても、その情報を知覚する「見る」という能力を説明できない。一目でその物の名称や特性を理解し、さらには人や動物の表情やしぐさから心を読むこともできるような「見る」という行為が著者の言葉を借りるとどれだけ「魔術的」なのか理解する。しかも、これらの仕組みについては現時点では神経科学上も謎だらけで満足な答えが得られないとのこと。神経科学の奥深さを知るとともに、最前線の神経科学者が私の隣で熱を帯びながら熱く語っているような感覚を覚える。
この記事の中でご紹介した本
40人の神経科学者に脳のいちばん面白いところを聞いてみた/河出書房新社
40人の神経科学者に脳のいちばん面白いところを聞いてみた
著 者:デイヴィッド・J.リンデン
翻訳者:岩坂 彰
出版社:河出書房新社
「40人の神経科学者に脳のいちばん面白いところを聞いてみた」は以下からご購入できます
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