36人へのアンケート 「#こういうときこそ本を読もう」 とっておきの1~3冊|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2020年5月2日 / 新聞掲載日:2020年5月8日(第3338号)

36人へのアンケート
「#こういうときこそ本を読もう」
とっておきの1~3冊

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イラスト・内田春菊
まもなく立夏。でも今年のGWは、コロナウイルスの猛威により、外出自粛が呼びかけられている。仕事や経済への影響、生活の困窮、学生が学校に行けない、アルバイトも出来ない…など不穏な非日常が続いている中ですが、「#こういうときこそ本を読もう」を合言葉に、かつて人生の中休みに読んだ本、長い目で見て力を与えてくれると思う良書、ステイホームにおすすめの本一~三冊を作家、研究者、批評家等、本好きの皆さんにご紹介いただいた。読書人ツイッター・HPでは読者の一冊もご紹介。あなたの一冊も教えてください。そして本を読む間だけでも、ここちよいひとときを。(編集部)


有栖川有栖
(小説家・推理作家)❖
磯野真穂
(文化人類学・医療人類学)❖
伊藤氏貴
(明治大学文学部准教授・文芸評論家)❖
内田春菊
(漫画家・作家・俳優・歌手)❖
大竹昭子
(作家)❖
大野光明
(滋賀県立大学准教授・歴史社会学・社会運動論)❖
温又柔
(作家)❖
加藤陽子
(東京大学大学院人文社会系研究科教授・日本近代史・近現代政治史)❖
姜信子
(作家)❖
切通理作
(批評家・ネオ書房店主)❖
九螺ささら
(歌人)❖
黒川創
(作家)❖
小杉亮子
(日本学術振興会特別研究員・社会学)❖
小林敏明
(哲学・精神病理学)❖
小林康夫
(東京大学名誉教授・表象文化論・現代哲学)❖
斎藤真理子
(翻訳家・ライター)❖
佐藤飛美
(在野研究者・イギリス現代文学)❖
管啓次郎
(詩人)❖
武田将明
(東京大学准教授・英文学)❖
立木康介
(精神分析家・京都大学人文科学研究所准教授)❖
東畑開人
(臨床心理士・十文字学園女子大学准教授・精神分析・医療人類学)❖
南陀楼綾繁
(ライター・編集者)❖
西貝怜
(目白大学非常勤講師・生命倫理学・近現代日本文学・行動生態学)❖
野上暁
(編集者・子ども文化評論家)❖
橋爪大三郎
(社会学者・至善館大学教授)❖
林香里
(東京大学大学院教授・ジャーナリズム/マスメディア研究)❖
福島勲
(早稲田大学教授・仏文学)❖
古田徹也
(東京大学准教授・現代哲学・倫理学)❖
星野文月
(作家・エッセイスト)❖
増田ユリヤ
(ジャーナリスト)❖
松井隆志
(武蔵大学准教授・社会運動論)❖
三浦佑之
(千葉大学名誉教授・古代文学・伝承文学研究)❖
御子柴善之
(早稲田大学教授・ドイツ近現代哲学)❖
山田航
(歌人)❖
山本貴光
(「哲学の劇場」主宰・文筆家・ゲーム作家)❖
明石健五
(本紙編集長)
第1回

有栖川 有栖

スティーブン・ピンカー『暴力の人類史 上・下』
(幾島幸子・塩原通緒訳、青土社)

全世界の人々が、新型コロナウイルスという〈共通の敵〉と戦っている。こんな事態を目撃したのは初めてだ。

次々に予定がキャンセルになって思わぬ時間ができた機に、大部な本を精読しようと、未読本の山から『暴力の人類史』を選んだ。全人類に関する書であり、しかも希望を呼び込む内容だと知っていたから、いま読むのに最もふさわしく思えたのだ。

通読に要したのは十日間。知的刺激と発見に満ち、隅から隅まで面白かった。

進化心理学の観点から、人間は次第に暴力を嫌悪して避けるようになっていることを実証し(著者も言うとおり、二度の世界大戦と核兵器で象徴される二十世紀をくぐってきた記憶からすると信じられないことだが)、その理由を考察した本だ。

蛇行しながらではあるが、私たちはより明るい方へ向かって歩いている。現在の苦難を乗り越えた先にも希望はある。(ありすがわ・ありす=小説家・推理作家)

磯野真穂

ハーモニー(伊藤 計劃)早川書房
ハーモニー
伊藤 計劃
早川書房
  • オンライン書店で買う
私たちは今、新型コロナウイルス拡大阻止が絶対倫理となった社会を生きている。健康であれ、他者の健康を阻害するな。そんな「逆らえない声」の前に、自分を手放さないための三冊を推薦したい。一冊目は
伊藤計劃『ハーモニー』
(ハヤカワ文庫JA)である。生府が支配する社会。人々はWatchMeという体に埋め込まれたアプリの指示通り暮らし、あらゆる病気から解放された日々を送る。しかしそれは「生きている」ことなのか? 優しさに覆い尽くされた世界に三人の女性が抗う。二冊目は
J・M・メツル/A・カークランド編『不健康は悪なのか 健康をモラル化する世界
(細澤仁ほか訳、みすず書房)である。「健康」というモラルが隠蔽する政治・経済的な思惑、及び健康概念についてのパラダイムシフトが複数のトピックを通じて明らかにされる。私たちは、健康が経験ではなく、統計的試算となった時代を生きているのだ。最後は、
小松理虔『新復興論
(ゲンロン叢書)である。震災後の放射能の恐怖、補償、そしてメディアの声は地元福島に多数の分断を生み出した。「震災」を、全て「コロナ」と読み替えれば、この先の指針が自ずから立ち上がる。(いその・まほ=文化人類学・医療人類学)


伊藤氏貴

施策としての「働き方改革」が空回りする中、このたびのコロナ禍は有無を言わさず人の働き方を変えた。しかし通勤することが命にすら関わりかねない今は、たんに働き方だけでなく、大きく生き方について考えるべき時なのだろうと思う。

家に籠らねばならないことが苦痛なら、「孤独でいる時にのみ、われわれは、本当の自分を、そして自分が心から欲しているものを知るのです」と説く
P・G・ハマトン『知的生活』
(渡部昇一他訳、講談社学術文庫)を読んではどうだろう。書簡という形で、時間やお金の使い方、健康法、読書の仕方など、実用的な技術が披瀝されるが、たんなる自己啓発にとどまらず、何のために働くか、何のために生きるかという「自分が心から欲しているものを知る」助けとなる。

原著は古く、時代に合わない部分もあるが、そこはむしろ時代のうつろいを知るきっかけになるだろう。抄訳もあるが、この五〇〇頁を優に超える全訳、文庫版を薦めたい。(いとう・うじたか=明治大学文学部准教授・文芸評論家)


内田春菊

ここんとこ人に「まだ読んでないならぜひ!」とよく言うのは
おおのこうすけ『極主夫道』
(新潮社)。もと最凶極道「不死身の龍」、今専業主夫の主人公とおそろいのエプロン(新潮社の通販で買った)つけて物真似してます。登場人物が皆誰かを喜ばせようとしている良い漫画!! 「ヒモ」という言葉が出てこないのにも感動です。もうひとつ、人を選んで薦めるのは(医学書院)私たちと同じ視点から語るドキュメンタリー。なのでもちろんバシッと結論は出ない。ムズムズする。そこがいい。どちらも今さら私が薦めなくても、なんですけど。

アマビエ(*1面)に関してはWEBマガジン「カドブン」の香川雅信さん(兵庫県立歴史博物館学芸員)の文章(3月19日付「怪と幽号外」)がとても面白かったです! 
わたくしも4月10日に竹書房より底辺男子たち漫画、
内田春菊『ボトム
が出ました。よろしくお願いします!(うちだ・しゅんぎく=漫画家・作家・俳優・歌手)


大竹昭子

本が崩れる(草森 紳一)中央公論新社
本が崩れる
草森 紳一
中央公論新社
  • オンライン書店で買う
ジャンルで括られるのが嫌いでいろんなものを書いてきたが、こんなふうに書いてもいいんだ、と思い込んでしまったのは
草森紳一
のせいである。彼の書くものは評論とも小説ともつかない独特のスタイルで、超ジャンルで、タイトルが風変わりときている。見ただけではまるで内容が想像つかない。つまり現代の出版業界が嫌がる要素がぜーんぶ入っていたということで、天の邪鬼ぶりが徹底していた。

最初に読んだのは
『子供の場所』
(晶文社)という本だった。怪しいおじさんと少女に睨みつけられるのもいとわず、近所の公園に日参して彼らの行動を追い、子供と遊びの関係を考察するのだが、それを文章にする際の融通無碍な筆運びに魅了された。一緒に入っている大倉舜二撮影の写真との関係も絶妙で、こんなふうに文章と写真を一緒にしていいんだ!と開眼した私は、以後自分の著作にも写真を入れるようになった。影響大である。

他にオススメはスリランカに蝶をつかまえに行く
『旅嫌い』
(マルジュ社)、本の山が崩れて風呂場にロックインされた
『本が崩れる』
(中公文庫)など。文庫は手に入るが、他は古書なので気長に探されたい。(おおたけ・あきこ=作家)

大野光明

パンデミックにより資本主義がその速度をゆるめ部分的に止まるなか、私たちは別の世界を垣間みていると想像してみたい。命を危険にさらしながらの労働への怒り。首相や社長、学長、理事長に嫌気がさした人びとの群れ。反資本主義の兆候を感じる。そこで気になったのは
ヘンリー・デイヴィッド・ソロー『森の生活 上・下』
(飯田実訳、岩波文庫)だった。湖のほとりで自給自足の生活を営んだソローの記録文学。「しなくてもいい心配や余計な重労働にわずらわされて、人生のすばらしい果実を摘み取ることができない」のはいまも同じ。森での暮らしと思索のように、いま家にいることは可能だろうか。

また、労働を拒否し、食べものや住む場所、心身を互いにケアする実践がある。ソローへもつながる不服従、相互扶助、自律の系譜をたどりたいと思う。
デヴィッド・グレーバー『アナーキスト人類学のための断章
(高祖岩三郎訳、以文社)をあげたい。生き延びるためにはアナーキズムが必要なのだ。(おおの・みつあき=滋賀県立大学准教授・歴史社会学・社会運動論)
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