ジャン・ドゥーシェ氏に聞く 152 反・映画ノスタルジー|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く
更新日:2020年5月15日 / 新聞掲載日:2020年5月15日(第3339号)

ジャン・ドゥーシェ氏に聞く 152
反・映画ノスタルジー

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1980年代中頃撮影
HK 
 タヴェルニエの『フランス映画への旅』は、フランスで著名な映画監督の有名シーンばかりを集めて、タヴェルニエがコメントをするといった内容です。選択された映画監督は、デュヴィヴィエなどに重きが置かれていました。ヌーヴェルヴァーグについては、『大人はわかってくれない』や『気狂いピエロ』など、これも又、有名なものの引用しかなかったと思います。引用された映像は、彼の多くの作品が非難されてきたように、「懐かしき古き良きフランス」を感じさせるものばかりでした。「これこそがフランス映画の歴史だ」といった押し付けがましさを感じます。大衆受けしない作品は、映画に入る余地はないのだと思います。
JD 
 それはタヴェルニエの大きな問題です。彼にとって、フランス映画は一つしかないのです。つまり、自分の好きな時代の映画です。その時代の映画にいかに近づけるかが問題なのです。彼自身を嫌いではありませんが、映画に対する考え方を、私は好きではありません。
HK 
 ボグダノヴィッチはいかがでしょうか。アメリカを代表するシネフィルの映画監督だと言ってもいいはずです。
JD 
 彼の映画も好きではありません。すべての作品を知っているわけではありませんが、重要なものは何もなかったように思えます。あなたはボグダノヴィッチの映画が好きなのですか。
HK 
 映画作品ではありませんが、フリッツ・ラングとの対談は面白かったと思います。
JD 
 それはボグダノヴィッチが面白いのではなく、ラングが面白いのです。ボグダノヴィッチは映画について多くのことを知っているかもしれません。しかし、映画そのものが何であるか、結局理解することができなかったのだと思います。ボグダノヴィッチもタヴェルニエも映画へのノスタルジーだけで満足しているのです。
HK 
 マーティン・スコセッシも彼らのようにかつての映画体験から映画を作っているようですが、シネフィル的な面が出ることがないように感じます。トリュフォーの映画も、世間で言われているのとは反対に、シネフィル的であるとは感じません。確かに、いくつかの映画愛を連想させる要素は出てきますが、映画が生活の一部としてあるようです。
JD 
 彼らは偉大な映画作家だからです。偉大な映画作家は、生についての映画を作っているのです。トリュフォーは、映画を模倣することで映画を作ってはいません。ゴダールも同様です。確かに、私たちは若い頃にシネフィルであり、映画を作りたいと思っていました。しかし、ルノワールや溝口であるかのように振る舞って映画を作りたいとは、誰も考えていませんでした。それがタヴェルニエとの大きな違いです。彼は、デュヴィヴィエになりたかったのです。
HK 
 ドゥーシェさん達にとっては、ルノワールなどが持つスタイルよりも、その考え方が重要だったのではないでしょうか。
JD 
 その通り。私たちが、ルノワールやロッセリーニから学んだのは、彼らの持つ生に対する考え方であり、映画のスタイルではありません。ルノワールの映画を真似して何になるのでしょうか。
HK 
 真似した作品は多くありますが、面白いものはないように思えます。ルノワールの映画は、彼の人柄が非常に強く出ている気がします。
JD 
 ルノワールは、誰にも嫌われることがない人でした。なぜなら、彼が人間そのものを好きだったからです。彼は誰とでも仲良くなることができた。その面については、誰も真似することはできません。私たちがルノワールから学んだのは、「映画とは何か」「自由とは何か」という考え方です。
HK 
 スコセッシにも、タヴェルニエのようなシネフィル的な側面があるのでしょうか。僕の意見では、スコセッシには、「かつての映画を撮りたい。しかし、もう撮ることはできない」という両義的なところがあるようです。
JD 
 私は、スコセッシは悪くない映画作家だと思います。しかし、本当に好きな映画作家ではありません。彼と同世代ならば、コッポラとデ・パルマの方が断然好みです。いずれにせよ、アメリカ映画が行き先を失った時代に、彼らは、それぞれの方法論において映画を再生させることのできたアメリカの映画作家です。スコセッシは映画とニューヨークから自伝的作品を作ってきたのだと思います。コッポラはアメリカ映画とは何であったのか、アメリカとは何なのかを考察することで映画を作りはじめました。
〈次号へつづく〉

(聞き手=久保宏樹/写真提供=シネマテーク・ブルゴーニュ)
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