俳句・連句REMIX 書評|浅沼 璞(東京四季出版)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2016年6月17日 / 新聞掲載日:2016年6月17日(第3144号)

連句が格段と身近なものに
ユニークで有益な一書の誕生

俳句・連句REMIX
出版社:東京四季出版
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連句人にして西鶴研究者である浅沼璞によって、連句に関するユニークで有益な一書、『俳句・連句REMIX』(東京四季出版 平成28年刊)が誕生した。

全体は序・破・急の三部からなり、「序 俳句的連句入門」では、俳句を随所に援用しての連句解説がなされている。たとえば、芭蕉の有名な句を対象に、「古池や」が前句で「蛙飛ぶ込む水の音」が付句に相当し、一句は付合の仕掛けによっている、と解読する要領である。こうした説明により、連句は格段に身近なものとして、読者の胸にスッと入ってくる。中でも感心させられたのは「親句のすゝめ」の項で、どうしても親句(前句に意味的に付きすぎた付け)になりがちな場合は、できた付句をすぐに提出せず、その付句に自ら再び付けていけばよいというのである。これは、想像に想像を重ねた上でシンプルな一句に仕上げていく、芭蕉晩年の付け方とも一致することであり、著者の慧眼に頭が下がる。

この「序」が理論編であるならば、「破 現代的連句鑑賞」は実践編にあたり、著者の創始した「オン座六句」(オン・ザ・ロックの洒落)形式の実作が示されている。学生や俳人らの仲間と一座して捌いたその連句作品は、実況中継とも言うべき適度な解説を得て、自分もその場に一座しているかのような臨場感を伴い、理解されることになる。連句の楽しさが作ることにあることは、言うまでもないことながら、同時に、連句を読むことも同じくらい楽しいのだと実感させられる。右の形式には自由律の連があり、これには賛否両論がある由。しかしながら、読んでみると、これが少しも違和感などなく、一巻の中に適度なアクセントを与えていることが了解される。これがあることで、定型のもつ意味と意義が改めて実感されることにもなり、著者自身が、「定型感が一度壊れて、あとでまた定型感を立て直すというところに面白さがあるようです」と述べる通りであろう。

最後の「急 連句的西鶴論」は、研究編とも言うべきもの。とくに、矢数俳諧(独吟・速吟の連句)と浮世草子との関係に言及するところが興味深く、俳諧の研究に従事する身としては、襟を正して読まないわけにはいかない。ただし、実例を多く引き、こなれた文体で論を展開してくれているため、格別に難解ということはない。中でも注目されるのは、西鶴の韻文と散文を直結してとらえる通説に荷担しないばかりか、この通説に対して提起された、矢数俳諧を〈行為の詩〉としてとらえる立場にも、安易に同調しないことである。従来の見方を越えようとする、その志は貴重ながら、ここに明快な結論が示されているわけでもない。この難題に対しては、著者や小生を含め、学界が知恵をしぼり合って取り組んでいかなければならないであろう。高柳重信・攝津幸彦を取り上げた最終章「昭和の西鶴、平成の西鶴」も興味深く、著者の視野の広さを、改めて感得させられた次第。

読み終わって、改めて西鶴らの作品を読んでみたくなり、また、自分も連句をやってみようかな、と思わせられたことである。
この記事の中でご紹介した本
俳句・連句REMIX/東京四季出版
俳句・連句REMIX
著 者:浅沼 璞
出版社:東京四季出版
以下のオンライン書店でご購入できます
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