雨ニモマケズ 外国人記者が伝えた東日本大震災 書評|ルーシー・バーミンガム(えにし書房)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2017年2月10日 / 新聞掲載日:2017年2月10日(第3176号)

雨ニモマケズ 外国人記者が伝えた東日本大震災 書評
震災の全体像をあぶりだす 
興味深いのは国内外へのメディア批判

雨ニモマケズ 外国人記者が伝えた東日本大震災
出版社:えにし書房
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著者のルーシー・バーミンガムは、タイム誌などアメリカの大手メディアに寄稿するフリーランスのアメリカ人ジャーナリストで、日本外国特派員協会の会長を務めるなど、日本での取材経験が豊富だ。もう一人の著者であるデイヴィッド・マクニールもイギリスのエコノミスト誌などに寄稿するアイルランド出身のジャーナリストで、日本の滞在歴も長い。

そんな日本をよく知る二人の記者が、アメリカの文芸エージェントからの依頼に応じて東日本大震災をルポしたのが本書である。六ヵ月以内という締め切りもあり、彼らが選んだ手法は、様々なタイプの被災者数人に焦点を絞り、彼らの生活を丹念に描き出すことで、震災の全体像をあぶりだそうというものだった。選ばれたのは、タイ系アメリカ人英語教師、保育園の調理師、漁師、高校生、南相馬市長、それに原発作業員という、男性五人、女性一人の被災者である。

二人の著者を含め、震災をめぐる外国人、そして外国政府の反応も詳細に記録され、貴重な記録となっている。

本書が秀逸なのは、日本を知らない外国人の読者を想定して書かれたこともあるだろうが、東北地方の人びとが蝦夷と呼ばれて大和朝廷から差別された歴史にも言及し、本書の表題となった宮沢賢治の「雨ニモマケズ」に至る、被災地の歴史的、そして社会的な背景が丁寧に書き込まれていることである。

さらに、海外でも関心が高いであろう原発事故について詳細に描かれているのはもちろんだが、興味深いのはメディア批判である。まずは外国メディアについて、フクシマ取材のため「日本について何の知識もないジャーナリストが大勢日本に派遣」された結果、「不正確な、あるいはバランスを欠いたレポート」が出回ったと批判する。では日本のメディアはどうであったか。著者は「日本の大手新聞とテレビ局が国の政・財・官のエリートから得た情報をそのままメディアとその向こうにいる国民へと伝える」記者クラブ制度の問題点を明らかにする。そのうえで「日本の新聞社の記者は自ら危険を冒そうとしない」と、鋭く指摘する。

本書のサブタイトルは「外国人記者が伝えた東日本大震災」だが、外国人であろうとなかろうと関係なく、彼らはジャーナリストとして、綿密な取材にもとづき、震災と原発事故の真相に迫っている。相対的に浮かび上がってくるのは、日本の大手メディアが、報道のあり方を含め、様々な課題をあるがままに伝えていないことである。

二〇一二年にアメリカで出版されて評判を呼んだにもかかわらず、「これほど優れたルポルタージュが、これまで日本で翻訳されなかったこと自体、本書が指摘するところの、日本のメディアの体質の一端のみならず、日本そのものを表している」と、版元の代表が「日本語版刊行の経緯」として書いているのは、正鵠を得ている。設立間もない独立系一人出版社が版元となったのも、象徴的である。

著者は終章を「東北魂」と題し、自然と共存する道こそ、これからの日本の針路であろうと提言している。「宮沢賢治の詩に想いを込めた」という二人の著者が、私には、日本人以上に日本を愛する真の日本人のように思えてきた。(PARC自主読書会翻訳グループ訳)
この記事の中でご紹介した本
雨ニモマケズ 外国人記者が伝えた東日本大震災/えにし書房
雨ニモマケズ 外国人記者が伝えた東日本大震災
著 者:ルーシー・バーミンガム、デイヴィッド・マクニール
出版社:えにし書房
「雨ニモマケズ 外国人記者が伝えた東日本大震災」は以下からご購入できます
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