百貨店とは 書評|飛田 健彦(国書刊行会)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2017年2月17日 / 新聞掲載日:2017年2月17日(第3177号)

百貨店とは 書評
羅針盤となる経営理念 
一世紀以上にわたり展開した要因とは

百貨店とは
出版社:国書刊行会
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百貨店とは(飛田 健彦)国書刊行会
百貨店とは
飛田 健彦
国書刊行会
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『百貨店とは』は三越呉服店が「デパートメントストア」宣言をして以来、他社も含めた百貨店が一世紀以上にわたり展開した経緯と要因を述べたものである。

第一部「百貨店の歴史と信頼性の秘密」では、欧米百貨店の模倣から始まった日本の百貨店の展開を述べている。まず、第一章「百貨店の誕生」は一九世紀中期以来の仏米百貨店の成立経緯を概観している。類書よりも割かれた分量が多い。次いで、百貨店の起源を呉服店に求め、呉服店の経営が後の百貨店に影響した利点がまとめられる。第二章「百貨店成熟までの足どり」は明治維新から昭和戦後期までを対象に、呉服店系百貨店の経営史およびその背景となる社会史が簡潔にまとめられている。

次いで、第三章「企業不老長寿の秘訣要因」には一世紀以上にわたり百貨店が経営を維持した要因が論じられている。まず、百貨店という小売業が顧客志向の最大の業態であったこと、明治政府の推進した文明開化路線に沿ったものであったこと等の要因が挙げられる。
しかし、三〇年といわれる会社の寿命に比較し一世紀以上の長期継続を百貨店が実現したことには他の要因を挙げる事ができると本書は指摘する。すなわち、看板・暖簾をはじめ、店内符牒・勤務心得・指示書等から生み出された経営理念が羅針盤となり、また徹底された点である。具体的には松坂屋、三越、伊勢丹が事例に挙げられる。そして「日経ビジネス」(一九九五年八月号)が明らかにした会社営業利益伸び率の調査を踏まえ、経営理念の有す会社の方が大きい伸び率を示す点が指摘される。
第二部「百貨店おもしろ話―百貨店「顧客満足」の温故知新」は創業者の略伝を各社経営理念形成との関わりで述べた個所で、本書最大の特徴を示す。これまで日本経営史や商業史の研究では特定呉服店を一・二点選び(三越と大丸が多い)、その家訓と創業者について触れる程度に過ぎなかったが、本書は約一六〇頁を割いている。取り上げられた百貨店は松坂屋、白木屋、三越、大丸、高島屋、天満屋、伊勢丹、そして呉服店系以外に阪急と、多岐にわたる。

著者は一九六〇年に伊勢丹へ入社し、九七年に同社を退職するまで実に三七年の間、百貨店業界に従事した。その立場から百貨店の現状を指摘した第三部「百貨店の今後のために」では、現在の百貨店が同一品目の品揃えに不備がある点を指摘している。百貨店は現在でも生活基盤、消費者信用、生活文化センターの機能を有しているため、顧客の必要に応じた商品に欠落を生じさせない点が力説される。

伊勢丹は近代に創業した呉服店として百貨店の系列では異端である。この特徴を踏まえ、創業者小菅丹治の伝記を著したのが同時刊行の『帯の伊勢丹 模様の伊勢丹』である。創業前後から開業後の事業展開に至る小菅の諸言動が伊勢丹商法との関わりで詳しく述べられている。また、花柳界、実業界等の顧客を獲得していった人脈や、題名の示す通り、織物図柄の研究機関を設ける等の呉服史的側面等にも少し触れられているので、近代社会史としても読めるものである。
この記事の中でご紹介した本
百貨店とは/国書刊行会
百貨店とは
著 者:飛田 健彦
出版社:国書刊行会
「百貨店とは」は以下からご購入できます
帯の伊勢丹 模様の伊勢丹/国書刊行会
帯の伊勢丹 模様の伊勢丹
著 者:飛田 健彦
出版社:国書刊行会
「帯の伊勢丹 模様の伊勢丹」は以下からご購入できます
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