安吾のことば 「正直に生き抜く」ためのヒント 書評|藤沢 周(集英社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2017年2月24日 / 新聞掲載日:2017年2月24日(第3178号)

安吾のことば 「正直に生き抜く」ためのヒント 書評
「三無」で共通する二人の「連携プレー」が冴える

安吾のことば 「正直に生き抜く」ためのヒント
出版社:集英社
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久々に痛快な本を読んだ。実は昨春刊行された同じ著者の歴史小説『武蔵無常』をどこかで評するつもりでいたのだが、機を逸した。今度も危ういところ、間に合った。良かった。

私も昔から大の安吾ファンだが、本書は無頼・無骨・無常の「三無」で共通する坂口安吾と藤沢周の「連携プレー」が冴える。たとえば「ふるさとは人間性の中にある」という安吾の言葉に対して、周氏は書く。「なんと温かなことか。過激な兄貴であるのに、時々、安吾湯で癒してくれる」。あるいは「各々のエネルギーには使用の限界があり」「原子エネルギーとても、同じこと」との発言には、こうだ。「どうです? 国と東京電力に聞かせたい話だが、相手はその耳がないときている」「人間が制御できないものは扱うべからず」「国や東電が聞く耳を持たないのであれば、我々が声を上げ続けるしかない」。また「拙者は戦争はいたしません」の「拙者」に注目。「いつでも相手を斬れるのに、断固、刀を抜かぬ、と宣言しているのだ」と解釈する。「禁止ぐらい、安易簡便な法はない」の言葉には、昨今問題になっている「特定秘密保護法」を取り上げる。「嫌だなあ。怖いなあ」という本音の取り込みが、また良い。安吾の「芸術は『通俗』であってはならぬが、いかほど『俗悪』であってもよい」には「素敵である」と応じ、ヘミングウェイやフィッツジェラルドなどを輩出した雑誌「エスクァイア」や松尾芭蕉を引き合いに出して、「『俗悪』とは人間の宝庫の謂いである」と書く。学校の机の裏に「偉大なる落伍者」となって歴史に甦る、と刻んだ安吾には、「常に人に笑われてきた」という大リーガーのイチロー選手をぶつけている。「笑われても、夢想でも、一心に持続すれば、お天道様はこたえてくれる」。良いねえ、周さん。絶好調。

「空無の只中に、己が浮かび、微塵ともなり、またその一微塵の中に、三界がある。光。光の中の光。闇。闇の中の闇」(『武蔵無常』)。武蔵に告げる小次郎の末期の呟き。「……そなたの……剣……。す……でに……剣、なり……」。藤沢周の才、すでにして安吾なり。すでに……筆、なり。
この記事の中でご紹介した本
安吾のことば 「正直に生き抜く」ためのヒント/集英社
安吾のことば 「正直に生き抜く」ためのヒント
著 者:藤沢 周
出版社:集英社
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