「リトルサイゴン」
著 者:麻生享志著
出版社:彩流社

「リトルサイゴン」

ベトナム系アメリカ文化の現在



 リトルサイゴンといえばアメリカの大都市に点在するエスニックタウンのひとつ。流行りの食事フォーやバインミーがベトナム系難民の暮らしを彩る。しかし、美食の陰にあるのは、戦争と脱越の辛い過去。幾多の困難を乗り越えた難民にとっては、生きてきたことの証でもある。本書では、リトルサイゴンから生まれ育った作家・芸術家が創る新しい文学と芸術にスポットをあて、ベトナム系文化の本質に迫る。  もちろん、ベトナム系を論じるには政治的トピックも避けては通れない。強い反共産主義を貫く一世難民と、アメリカ的なリベラリズムを吸収しながら育った若い世代は、これまでも幾度となく衝突を繰り返してきた。それでも両者をつなぐのは、戦争で失った祖国への深い想い。小説『シンパサイザー』でベトナム系作家として初めてピューリッツァー賞を受賞したヴィエト・タン・ウェンや、東京・森美術館で大規模個展を開いたディン・Q・レを創作に駆り立てたのは、戦争への激しい憤りと強い祖国愛だった。本書を通じて21世紀の今、躍動するベトナム系作家・芸術家が紡ぎ出す「物語り」に是非耳を傾けて欲しい。 筆者=麻生享志 (四六判・二九二頁・本体三、〇〇〇円)

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