アメリカ文学との邂逅 コーマック・マッカーシー
著 者:山口和彦著/諏訪部浩一監修
出版社:三修社

アメリカ文学との邂逅 コーマック・マッカーシー

錯綜する暴力と倫理



 コーマック・マッカーシーはアメリカ文学を代表する作家と見なされているが、作品の評価は長らく上がらず、その素顔も謎に包まれていた。その作品の魅力は、例えば、グローバリズムのもとに均一化される世界や他者への共感を喪失した人間とは正反対の世界や人間のあり方を幻視し、希求する営みにあると言えるだろう。本書が論じるマッカーシー小説十一作が一様に含む、混沌とした常ならぬ空気感は、物語の舞台がアパラチアの山村、ボーダーランドの砂漠地帯、ポストアポカリプスの世界であっても、今日の読者が驚異と畏怖の念を抱くに十分だ。それは類まれなる構想力や言語表現によって実現しているのだが、読者の個人的経験と絶妙な化学反応を起こすことで、小説的真実へと昇華されることになる。さまざまな様態の「暴力」に満ちた世界を見渡しながら、その内実を克明に描きつつ、いかなる「倫理」を紡いで生きることができるのかを読者に問う、マッカーシーの小説を探究するきっかけを本書が提供できれば幸いである。 筆者=山口和彦 (四六判・三四〇頁・本体二、六〇〇円)

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