「読書人」テクスト工房 開設に当たって

渡部直己(文芸批評家)

今秋より、下記要領のもと、「読書人隣り」のスペースで、小説と批評のセミナーを開催します。
 
その看板文字に掲げて「工房」の一語を選ぶのは、ほかでもない。このセミナーを、何よりまず、小説および批評の書き方=読み方をめぐる具体的な「手仕事」の場として展開したいと考えるからです。折しもわたしは、『日本小説批評の起源』(河出書房新社)と題した書物を上梓しました。いくぶんか破天荒なその書物は、「小説=批評」なる視界のもと、一事の「起源」を、明末清初の金聖嘆なる文芸理論家が『水滸伝』に施した即物的な「注釈」に求めるというもので、そこにはたとえば、〈「物のあはれ」の反義語は「漢意」ではなく「物」である〉といった命題が書き込まれています。ここにいう「手仕事」もまた、同様の即物性に連なります。
 
もちろん、小説や批評の組成にかんする一般的な知識やテクスチャルな理論も適宜おおいに伝授しますが、今回第Ⅰ期の主眼は、提出された作品を素材とした、個別の添削指導と評価付きアドバイスに置くことにします。「物」がなければ「批評」はなく、したがって「指導」もないといった方針に、今回は徹したいとおもいます。
 
当初、このセミナーは、定員上限三〇名程度の一般的な講義プログラムとして、今春に開始するつもりでおりました(概要は下記参照)。準備も整いかけていた頃に、世上あまたの例に漏れぬかたちで、やむなく頓挫した企画です。同様のものは、来春の第Ⅱ期以降、情勢がゆるせば仕切り直すつもりでおりますが、いまは、今回のプログラムにより、「コロナ禍」転じてかえって「福」となることを祈念いたします。
 
奮ってご参加、どしどしお書きください。


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◇第Ⅰ期:通信+個別指導(二〇二〇年一〇月~二〇二一年三月末)

・募集:一〇名(先着順)

・作品提出:期間中一人四本以内(一〇月末日を目途に第一回作品をお寄せください―応相談)
 (1)第一回提出作品→個人指導(面談六〇分)
 (2)第二回、第三回→通信指導
 (3)第四回(最終回)→個人指導(面談六〇分)

・提出作品:小説、批評いずれでも可(回ごとの選択も可)

・枚数:上限一〇〇枚・四万字程度(一〇枚~三〇枚の短篇・書評も可)。作品は原則としてデータ原稿で提出(ワード・一太郎ファイルなど)。手書き原稿の場合は応相談

・指導方法
 ①第一回作品提出
 ②当該作品についての個別指導+今後のアドバイス
 ③第二回作品提出→通信指導(評価表つき)
 ④第三回作品手出→通信指導(評価表つき)
 ⑤第四回作品提出→当該作品および第二、第三回 提出作品についての個別指導
 総括評価(アドバイス)
 ※面談指導日時は、期間中の土・日曜日午後を基本に、応相談

・通信評価表
 *小説作品評価
 書かれた内容と書き方、双方にかかわるポイントごとに適宜ABC評価したうえで、総評コメント。→渡部直己『「電通」文学にまみれて』(太田出版、一九九二年)の評価表形式(下図参照、同書より抜粋)に準ずるが、コメントは下記「寸評」よりも丁寧かつオーソドックスなものとする。
 *批評作品
 小説の場合と同様、書かれた内容と書き方との双方につきポイントごとに(テーマ、引用文、論旨の展開力、説得力、文体、創造性、等)適宜ABC評価したうえで、総評コメント。

・受講料:二万円(税別、四回通しのみ)


◇第Ⅱ期・連続文学講座「名作から学ぶ書くことのツボ」

【概要】本講座は、本気に小説を「書きたい」人のための実践講座である。日本の近現代文学の名作に学びながら、その小説技法を解読し、書くことの〈ツボ〉を、具体的にわかりやすく伝授する。
なお希望する受講者は、講義期間中に一〇〇枚程度の自作(小説・批評)に対して、講師による個別講評・アドバイスを受けることができる。(提出義務はありません)

【時期】二〇二一年四月開講予定

【内容・取り上げる作品】
・第一回 導入Ⅰ 村上春樹『風の歌を聴け』
・第二回 導入Ⅱ 村上龍『限りなく透明に近いブルー』
・第三回 基礎理論編(「テクストの原理」)
・第四回 田山花袋『蒲団』
・第五回 谷崎潤一郎『春琴抄』
・第六回 中上健次『千年の愉楽』
・第七回 尾崎翠『第七官界彷徨』
・第八回 樋口一葉『にごりえ』
・第九回 受講者希望作品(事前リクエストをもとに現代文学作品から一編)

 *習得効果の多寡に鑑み、指定作品の事前読了をお勧めします。
 *内容の一部が変更される場合があります。


*Fiction………語られたもの(物語内容)
         I=出来事・素材 
         Ⅱ=作中人物
         Ⅲ=思弁あるいは心理

*Narration……語り方(物語言説)
   Ⅳ=文体・語り口 
   Ⅴ=構成(空間配列・時間処理・人称転換・対比性etc.)
   Ⅵ=対象描写 Ⅶ=会話・心内語
   Ⅷ=実験性


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