コロナ禍の大学はいま、

対談=石原俊×中村隆之

 今年はコロナ一色に染まる、歴史に刻まれる特別な年となってしまった。世界中が抱えた問題は山積みだが、その大きな一つに、これからの社会を担う若者たちの学びの場、「大学」の問題がある。春学期が終わり、秋学期が待たれるタイミングで、いま大学が置かれた現状について、明治学院大学社会学部教授の石原俊氏と、早稲田大学法学部准教授の中村隆之氏にお話いただいた。(編集部)


コロナ禍の大学で、何が起こっていたか

 中村 今日は大学の成績の提出締め切りだったのですが(※対談日は八月十七日)、ひと月後にははやくも秋学期が始まります。前期に起きた抜本的な大学の変化について、客観的に振り返るタイミングだと思います。自分たちは大学という現場で、どのような位置に立たされ、今後どう関わっていくべきなのかと。もちろんどういうポジションから物を見るかで、全く違ってくる話だと思うのですが。

 石原 そうですね。まず、私も中村さんも大都市圏の比較的大規模な私大の文系の教員なので、そういう意味では知見が偏るかもしれないことを前提に、この対談は進めるのがいいですよね。

 中村 政府の緊急事態宣言を受けて、とりあえずどこの大学もキャンパスを封鎖したのが四月上旬。対面授業が模索された時期もありましたが、ある段階から完全にオンライン一本でいくということになりました。ほとんどの教員にとってオンラインによる授業は初めてのことだったので、皆あたふたしていましたね。

 石原 文科省が緊急事態宣言にともない、大都市圏の大学の授業はオンラインで実施し、遅くとも五月から本格的に開始することと通達したんですよね。九〇分授業の大学であれば、四月は試行期間として授業二回分にカウントし、五月からはオンライン授業で最低十一回行うこと。普段は十五回+予復習で半期となりますが、今回は二回+十一回で計十三回+予復習で、所定の学修時間を満たしたことにするということになりました。

 中村 僕が勤める早稲田大学で、全学的に提示された授業のパターンは、オンラインの事前録画型と、リアルタイム配信型、それに課題提示型でした。それまで当たり前に教室にきて、対面で行ってきた授業を封じられた上で、まず与えられたのが授業方法だった。
 それぞれがとにかく試行錯誤して、初期の混乱を経ると、意外に多くの教員が、オンラインに対してポジティブな感触をもち始めた気がします。そして春学期が終わったいまは、うまくいった、乗り切ったという、ある種自己愛的な語りが目立ちます(笑)。

 石原 明治学院大学でも、オンライン授業について提示された内容は、ほとんど同じです。Zoomを使ってリアルタイム双方向型にするか、パワーポイントに音声をつけてオンデマンド配信にするか。ゼミはリアルタイム配信で、大規模授業はオンデマンド、おそらくこれが、大規模私学の文系科目における、コロナ下でのスタンダードだったろうと思います。<つづく>

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★いしはら・しゅん=明治学院大学社会学部教授・社会学・歴史社会学・島嶼社会論。著書に『硫黄島』『群島と大学』『〈群島〉の歴史社会学』『近代日本と小笠原諸島』など。一九七四年生。

★なかむら・たかゆき=早稲田大学法学部准教授・フランス文学・カリブ海文学研究者。著書に『野蛮の言説』『ダヴィッド・ジョップ詩集』(編訳)『エドゥアール・グリッサン』など。一九七五年生。


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