芥川賞について話をしよう 第18弾

小谷野敦*倉本さおり

第一六三回 芥川龍之介賞

第一六三回芥川賞は、三回目の候補となった高山羽根子『首里の馬』と、初ノミネートの遠野遥『破局』の二作受賞となった。ほかの候補作は、石原燃『赤い砂を蹴る』、岡本学『アウア・エイジ(Our Age)』、三木三奈『アキちゃん』の三作品だった。前回に続き、小谷野敦氏と倉本さおり氏に、芥川賞について、たっぷりお話いただいた。(編集部)



淡々とした欲望、ずれた世界
◎『首里の馬』


 小谷野 三度目の候補での受賞。どちらかというと今回の作品はまとまっていると思いました。ただちょっと長い。あの半分で書けると思います。
 筋がないという意味で、純文学っぽい、芥川賞っぽい受賞作ではありましたね。「モノ派」の画家だというのに少し納得があった。キャンバスにただ色を置いていくように、クイズの話題や、宮古馬が出てくる。

 倉本 『首里の馬』は沖縄を舞台にしながら、土地の描き方、向き合い方が不十分、という選評もありましたが、むしろ私はそこが本作の核だと思いました。視点人物である未名子の両親は沖縄出身ではないため、未名子自身は沖縄で生まれ育っているものの沖縄の言葉を話さないし、周囲の人との付き合いもほとんど持たない。つまり、この小説は「沖縄」の内側に立てるものではないことを最初から明示しているんですよね。外の人が沖縄を舞台に書こうとすると、ともすればツーリングとしての沖縄、コスプレとしての沖縄になりがちですが、『首里の馬』はそうなっていないところがよかったと思うんです。

 小谷野 これまで芥川賞を受賞している沖縄小説は、大城立裕、東峰夫、又吉栄喜、目取真俊と、沖縄県人が書いた作品でしたよね。<つづく>

本編のつづきは以下で読めます

【PDF販売版】

【新聞販売版】

★こやの・あつし=作家、比較文学者。著書に『聖母のいない国』(サントリー学芸賞受賞)『とちおとめのババロア』『この名作がわからない』(小池昌代との共著)『歌舞伎に女優がいた時代』など。一九六二年生。

★くらもと・さおり=書評家、ライター。一九七九年生。