目次

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これからの時代、「自分さえよければ」は通用しない!
大人にもっと未来を心配してもらおう

『こどもSDGs なぜSDGsが必要なのかがわかる本』(カンゼン)監修者
秋山宏次郎氏インタビュー

PART1

 カンゼンより『こどもSDGs なぜSDGsが必要なのかがわかる本』が刊行された。国連が定めた2030年までに達成を目指す世界共通の目標であるSDGs(持続可能な開発目標)。世界がいま直面している問題となぜそれを解決しなければならないのかを子どもにもわかりやすく解説した本書の売れ行きが好調だ。未来を担う子どもたちがSDGsを学ぶ意義とは何か、自身の体験や教育現場の現状など監修者の秋山宏次郎氏にお伺いした。(読書人編集部)
※≪週刊読書人2020年10月23日号≫に掲載されたインタビュー内容のロングバージョンをウェブ限定で公開します。

『こどもSDGs なぜSDGsが必要なのかがわかる本』
著者:秋山宏次郎氏(監修)/バウンド(著)
出版社:カンゼン
ISBN13:978-4-86255-561-8


SDGsでアクティブ・ラーニング

 最近になって文部科学省が学校で習う内容にSDGsを盛り込んだため、ご家庭によっては子どもから親に伝わるケースもあるようです。「お父さん、SDGsって知ってる?」と子どもに聞かれて初めて親が知るといったように(笑)。

 SDGsというのは複合的で複雑なトピックであり、さまざまな社会的要素が絡んでいる分、先生方も教え方が難しいと思いますが、最近は、子どもたちに自主的に考えさせる方向へ促す、いわゆるアクティブ・ラーニングの題材としてSDGsを使う先生が増えてきたように思います。本書には様々なSDGsに関する問いが書かれています。例えば、「食品を大量に輸入して、捨てる日本をどう思う?」、「水が自由に使えないと、どんな不便があるだろう?」、「お金持ちと貧しい人の差についてどう思う?」といったように。その問い一つだけでも専門家同士で数時間議論できる内容になります。そういったテーマを子どもたちがどう考えるか、ぜひ多くの授業で活用してもらった事例を見てみたいですね。


子どもの学ぶ意欲を引き出す

 子どもはSDGsを知ることを通じて、今目の前の勉強(いわゆる知識習得としての勉強)に、より身が入ることがあります。なぜかというと、SDGsという課題は、「答えはこれです」という明確なものはないからです。そこで、子どもたちにそういった課題を与えると、初めて世の中の問題を身近に捉え、それを解決するためには今目の前の勉強が必要なのだと気づくのです。

 例えば、大気汚染や温室効果ガスの軽減に繋がると期待されている洋上風力発電を例にした物理の浮力計算の授業を行われていた先生がいました。洋上風力発電は、水深が深いところでは海の上に発電機を浮かべるわけですが、この風力発電機がちゃんと浮くためにはどれくらいの重さが最適でしょうか?といった問題を出します。すると、「この勉強がリアルに社会の役に立つんだ」と子どもたちの目の色が変わったそうです。こうして学ぶ意欲に繋がっていくんですね。

 知識詰め込み型の学習が見直されている昨今ですが、僕はSDGsを達成するうえで「知識」は非常に武器になると思っています。何か大きなことを達成する時には、実は熱い心を持っているだけでは力にならず、知識が必要になります。例えば、フローレンス・ナイチンゲールは日本では自愛に満ちた看護婦像としてイメージされがちですが、彼女があれだけ有名になったのは数学の力があったからです。彼女は母国イギリスでは、むしろ統計学者としての面を認知されていまして、病院の衛生状況や死亡率の関係性について数学を使って説いていき、世界の医療衛生改革を実現しました。

 ですから、SDGsがきっかけで学ぶ意欲を持った子は、自ら知識を習得し、最終的にSDGsの課題解決に大きく貢献する人材に成長するという良い循環になっていくと思っています。


日本におけるSDGsの普及

 経団連が企業トップに対してSDGsに対する意識を強めるよう促したこともあり、大企業ではトップダウンで認知させるケースがだいぶ増えてきたとは思います。ただ、トップダウンで認知させた後、意識付けまでしっかり落とし込めている企業はまだまだ少ないように感じます。例えばSDGsのバッジを全社員に配って終わり、といったように。バッジを配り啓発することはSDGsを認知してもらう第一歩としては、とても意味があるとは思うのですが、バッジをつけることで終わってしまってはSDGs目標達成に貢献しているとは言えないですよね。このように、認識は少しずつ広まってきているけれど、今後は具体的なアクションまで起こせる企業が増えていく必要があると思います。そのためのお手伝いを様々な企業に現在働きかけているところです。

 例えば、ブックオフの「宅配買取サービス」を利用した支援の仕組みを構築しました。中古品を買って売るというブックオフのビジネスモデル自体が、サーキュラーエコノミー(循環型経済)と呼ばれるエコな活動でもありますが、利用者サイドに立ったときに実際にブックオフまで本を持っていくということが大変だったりしますよね。わざわざ少し遠い場所までは運びたくないけれど、自分の日常生活圏内で本を出せれば利用するという人は多くいます。そこで有効なのが「宅配買取サービス」です。例えば、会社に段ボール箱を置いてもらい、社員の皆さんが不要になった本を自由に入れて貰います。そして、ブックオフがその段ボールを回収し、買い取った金額は支援を必要とする団体へ寄付されるという仕組みです。その事業に、こども食堂支援機構も提携しまして、全国のこども食堂に訪れる子どもたちへ支援が行き届く活動を実施しています。