異論・反論 イスラームを巡る10の書簡

インタビュー=飯山陽/中田考
『イスラームの論理と倫理』(晶文社)刊行を機に

飯山陽インタビュー

 イスラーム法学者の中田考氏とイスラム思想研究者の飯山陽氏による共著『イスラームの論理と倫理』(晶文社)が刊行された。イスラーム研究を専門としつつも、異なる立場、異なる価値観から日頃言論活動を行っている両者の議論の対立は、SNSなどのフォロワーなら周知のことだろう。そんな二人が晶文社スクラップブック上で昨年10月から今年の6月まで掲載された往復書簡形式のWEB連載を一冊にまとめた本書は、おそらく近年刊行された人文書のなかでも異質な激論飛び交う内容となっている。
 本書刊行を機に、飯山氏にはメール、中田氏にはZOOMでそれぞれインタビューを行い、本書を巡るさまざまなお話をうかがった。合わせて、本書の編集を担当した晶文社の安藤聡氏にも企画の経緯や読みどころについてのコメントも合わせて掲載する。(編集部)

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イスラムという切り口から世界を語る新奇さ、面白さ

 ――本書のまえがきで飯山さんは「20年以上前に初めて出会った時から今に至るまで、中田先生は私にとって、全く分かり合うことのできない異質な他者です」と述べているほどの人物ですが、今回の往復書簡を引き受けた動機を教えて下さい。また、依頼がきたときに引き受けるか否か逡巡はありましたか?

 飯山 逡巡はありました。なぜなら私は中田さんとは面識がありますが、不快な経験しかしたことがなかったからです。

 中田さんというのは、イスラム的価値観を当為として生きる人です。イスラム的価値観に基づくと、私は異教徒(非イスラム教徒)で女という二重の意味での劣等者ですから、私を差別するのは彼にとっては当たり前なのです。ただしそれは私にとっての当為ではありませんから、わざわざ往復書簡という体裁をとって、公然と中田さんに見下され、差別されるのはごめんだと思いました。

 編集の方にその旨お伝えしたところ、中田さんにそうした意図はないとうかがったので、お引き受けすることにしました。

 というのも私は、中田さんをはじめとする日本のイスラム研究者の言説について、非常に偏っていて現実と乖離しているという認識をもっていたためです。この企画を通し、私の問題意識を読者の方々と共有できればいいなと思ったのが、お引き受けした理由のひとつです。

 ――昨年10月~今年6月までのWEB連載を経て本書は刊行されましたが、今回のお仕事を通して、あるいは本書の出来についてどのような感想を抱いていますか? また連載形式でお互いの時論を重ねたことによって知見として得たものはありましたか?

 飯山 テーマが多岐に及んでいるので、イスラムという切り口から世界を語る新奇さ、面白さのようなものをお伝えできる本になったのではないかと思います。

 私個人としては知見を得たというよりは、日本を否定してこき下ろしイスラム教を賛美する、トルコ、イランを理想視する、タリバンと「イスラム国」を擁護する、唐突に関係ない話を始める、論点をずらす、規定の文字数を守らない、といった中田さんの特徴を再認識する機会になりました。

 また私を一貫して「飯山さん」と呼ぶ一方、「松山洋平博士」「山本直輝博士」など自分のお気に入りの人には「博士」をつけて呼んでいるところに、相変わらずの異教徒差別、女性差別に加え、中田さんの権威主義も確認しました。ちなみに私も博士の学位は持っています。

 私のことは「反動」「悪貨」などと描写しているので、ご自身が主流であり正義であり良貨であるという強い確信も持っているようです。<つづく>



★いいやま・あかり=イスラム思想研究者。東京大学大学院人文社会系研究科アジア文化研究専攻イスラム学専門分野単位取得退学。博士(東京大学)。著書に『イスラム教の論理』(新潮新書)、『イスラム2.0──SNSが変えた1400年の宗教観』(河出新書)がある。1976年生まれ。
Twitter(@IiyamaAkari)とnoteで、イスラム世界の最新情報と情勢分析を随時更新中。