霊性と、コロナと。
――コロナのマイナス・エネルギーをプラス・エネルギーに変えて絵でも描きましょう

横尾忠則ロングインタビュー

『横尾忠則 創作の秘宝日記』(文藝春秋)刊行を機に

美術家の横尾忠則氏が『横尾忠則 創作の秘宝日記』(文藝春秋)を刊行した。本紙連載「日常の向こう側 ぼくの内側」の二〇一六年五月九日から二〇二〇年六月十四日までの日記が収録されている。刊行を機に横尾氏にお話を伺った。夢、芸術、コロナとの共存、無為等々、強張った心身に余白と愉しさが生れる心地がする話。(編集部)
《週刊読書人2020年10月23日号掲載》


『横尾忠則 創作の秘宝日記』
著者:横尾忠則
出版社:文藝春秋
ISBN13:978-4-16-391256-1



創造と破壊/夢のデタラメさを生きる

 ――連載時に読んでいるのに、本のかたちで読み直して改めて驚くことがありました。例えば2016/12/11の日記に「ゴタゴタ続きのオリンピックは開催できるの?エンブレムのデザインの小さいチップをひとつ取りはずすと、全部が一気に空洞内に崩落してパラリンピックのエンブレムのように下方にチップが山積する。そんな不吉な暗示をあの2つのエンブレムは予感させる」と。二〇二〇年の日本は、この記述の通り空洞化して、崩落状態になっています。

 横尾 こういう国家的な事業の成否は象徴的なシンボルが運命の鍵を握ることがあります。エンブレムが発表される前に、図像学で解読する人がいなかったことと、またそういう認識をする人もいなかったんだと思います。

 ――また、これは本には収録されていない最近の日記ですが、息子さんが実は金正恩だったと知る夢がありましたよね。現実では数日前、金正恩が国民に対して涙を流しながら謝罪の言葉を発したと、変貌ぶりがニュースになりました。まるで予知夢かのような……。

 横尾 ハッハッハ、あの夢はおかしいでしょう。小高い丘の向こうが海で、後ろ側は林道。ぼくの夢の中にたびたび出てくる舞台装置なんです。そこにビルが二棟あって、隣のビルに気配を感じたので見たら、息子が手をふっている。あれ?と思ってもう一度見直したら、金正恩だった。長い間気づいてなかったけど、実は北朝鮮の総書記がうちの息子だったのかと。それがなんだかうれしくってね。でもなんでうれしいのかその根拠がわからない(笑)。こうした夢のデタラメさを生きるって必要ですね。

 ――今年の横尾さんの初夢は、猫が「人間たちの話がくだらなすぎる、もっとクリエイティブな話をしろ」とニャーニャー騒ぐものだから、クリエイティブな話をし始めたら静かになるという内容でした。コロナは人間が自然環境を蹂躙してきたことの結果、生まれたものだといわれています。その予見かはわかりませんが、人間のバカさが、横尾さんの夢に現れたのかなと思いました。

 横尾 へぇそんなことあった? 猫はなかなかいいこといいますね(笑)。ぼくが作ったのか、誰か別の存在が操作しているのか。夢は必ずしも無意識からだけでなく、死者から届く情報だったり、アカシックレコードからだったり、天才的な人間の想像力が地球の裏から発信されていて、それと共有するってこともあると思うんですよ。本来これは科学の範疇の問題なんだけど、現代の科学は世界の本体を物質とする考えが主流で、精神現象を肯定する唯心論に関心をもつ人は少ない。だから五感という肉体感覚で知覚、認識できないものは否定される。五感を超えた不可知なものにこそ価値があるという時代ではないですからね。<つづく>

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★よこお・ただのり=美術家。二〇一二年神戸に横尾忠則現代美術館、一三年に香川県に豊島横尾館開館。一九三六年生。