あるべき五輪と都市のために

対談=吉見俊哉×アンドルー・ゴードン/書評=樋口良澄

【編集室から】

「誰のための、何のためのオリンピックか」。これが本書の根底にある問いのひとつである。それはおそらく選手や観客、開催地の市民だけではなく、世界中の人たちの幸福のためであるように思う。戦後の日本社会と東京という都市を、五輪の舞台・演出・演技という視点から明晰に把握し、選手や沖縄の人たちの心情にも寄り添う著者の、歴史に基づいた批判的な思考力や他者の経験に対する繊細な想像力に触発された。経済成長の後に必要な、地に足のついた生き方と持続的な都市のあり方をめぐる提言も共鳴しながら拝読した。さらにお二人の対談から一冊の本を詳細に読解することの大切さも教えていただいた。心から敬意を表します。(T・T)