古典をいま、境界を越えて読む喜び

対談=林道郎×井上隆史 (司会=中西豪士)

編集室から

長く読み継がれてきた古典のラディカルな力は、世界の見方を変え、自分の生き方を解き放ってくれるところにある。一冊の名著を読むことは、いままで想像もしなかったような新鮮な感受性や知性と出会うことであり、豊饒な書物の歴史にかかわっていくことであると思う。井上氏のいう「三島の手になるテクストとさまざま文芸の世界とを自由に横断する読書行為」、そして林氏のいう「死者とともに在る」関係のあり方には、ニヒリズムというものを乗り越え、別の世界を想像していく手がかりが秘められている。研究と批評を自在に行き来するような対談は難解だったけれども、美術や音楽のいろいろな作品を含めてたくさんのことを教えていただいた。(T)