多忙を極めた現代社会を生き抜く

対談=先崎彰容×水無田気流

編集室から

「本当は奥に隠しているんじゃないのか!」数か月前、近所の薬局で品切れの商品について、店員に詰め寄る客を見た。その瞬間、心に冷たいものが刺し込まれ、息苦しくなったのを覚えている。なぜか。『共同幻想論』を読んだ今なら分かるが、私は自分たちの精神や社会の脆さや弱さに驚き、愕然としたのだろう。
「自己幻想」「対幻想」「共同幻想」といった吉本さんの造語に加え、『古事記』『遠野物語』などの作品が登場する『共同幻想論』は、読みやすい書籍ではない。けれど、時間をかけて読み込めば、吉本さんの伝えたかったことが何となくでも感じられるはずだ。そこに先崎さんのテキストを用意すれば、『共同幻想論』に挑む準備は完璧である。コロナ禍も、いき苦しい社会も、当分は続いていく。そんな社会で呼吸するヒントが、『共同幻想論』には記されている。(N)