私の源へ、ことば以前のことばから

温又柔インタビュー/寄稿=吉良佳奈江

編集室から

 沸騰したお湯が鍋から噴き出している、そのコンロの炎が乱れるようすに、桃嘉がみとれるシーンから物語ははじまる。何ということはないが、素敵なはじまりだ。と、その母も、炊飯器から湯気がたちのぼるようすにみとれている。似たいと思っていなくても似てしまったり、同じ感覚で物を考えたり、家族というのは一筋縄ではいかないものだなぁ…。母娘を描く物語には、身に覚えがあるだけに、読むのがツライものもある。でも『魯肉飯のさえずり』はそうではない――のはなぜだろう? (安直過ぎるが〈物語の力〉か)。
 今回、友人の茜の存在には触れられなかった。深山家とはまた異なる、茜と母の関係性が、桃嘉たちに間接的に影響を与えたこともあっただろう。こんなふうに、読み終えたあともぽとりぽとりと考えることができる、ことばを反芻することができる、そういう本に出会えるのは、読書の至福だ。インタビューはまるでガールズトークのような、とても楽しいひとときだった。(S)