表現の不自由がもたらす近未来

対談=桐野夏生×星野智幸

編集室から

『日没』読了後、自分が何を読んでしまったのか、しばらく分からなかった。今、改めて考えると、何かとんでもない小説を読んだこと以外、脳が理解したくなかったのかもしれない。
 物語の舞台は、「社会に不適合」な作品を書く作家を「更生」させる、国家の療養所だ。そこにいるのは、ノーベル賞を受賞するような感動作品だけが正しい小説だという多田、文学は狂気という持論の相馬をはじめとする職員たちである。どう考えてもとんでもない場所だが、その言論弾圧を支えているのは「レイプシーンを描いた作品は、レイプを推奨している」と捉える読者だ。これが文学を取り巻く現状だと思うと、何とも言い難い気分になってしまう。星野さんが対談中、『日没』を究極の〈ホラー小説〉と評していたが、その通りである。
 物語のラスト、桐野さんが再稿で加筆した一五行の受け止め方は、人それぞれだと思う。そこを踏まえたうえで、文学の行く末を考える。この物語が、現実とならないことを祈りながら。(N)