コロナ禍の祈り、一冊の本が誘う旅

内田洋子インタビュー

編集室から

 星野源の「くだらないの中に」に、首の匂いがパンみたいだと発見する歌詞がある。こんなこと書いたら変態っぽく思われるんじゃないかと、躊躇しそうな言葉の中の、真実が心に残る。

 イタリアの若者たちの日記も、一年前だったら彼ら自身にとっても、とるに足らない日常だったはずのささやかな暮らしの中に、「本当」や「愛」や「悲しみ」や「救い」があらわれていた。外からの刺激が遮断されることで、彼らの喜怒哀楽の一つ一つが、深まっていた。一つの流れのある物語、というわけではないので、読後感みたいなものはないけれど、青い本のページを開くと、時にたゆたう。国が違い、環境や状況も違うけれど、二〇二〇年春の、私自身がとり巻かれていた空気も同時によみがえる。

 これからまだこの閉塞した状況は続きそうだ。それは、日常のささやかなことの中に大切なものをみつけるチャンスでもある。(S)