短剣を手に、世界の終末を生き残る

対談=伊藤詔子×西山智則

編集室から

 ポーの作品を読み直して、気がついたことがある。「恐怖の対象を、正しく認識する大切さ」だ。「スフィンクス」の語り手は、小さな虫を誤認識しパニックに陥りかける。かたや現代人はデマと噂に振り回され、他者を攻撃する。恐怖は誤解を生み、差別に拍車をかける最大の要素。コロナ禍でよく分かった。西山さんが仰る通り、私たちはそろそろ「自らの内に棲む黒い存在」を正しく見つめるべきなのだろう。ポーの鳴らす警鐘が、数百年の時を経て聞こえてくる。

 余談だが私が敬愛する江戸川乱歩は、ポーに影響を受けた作家の代表格。その乱歩が生み出した大怪盗〈怪人二十面相〉は、マガジニスト・批評家・詩人・作家・自然史家……いくつもの顔を持つポーに通じるのではないか。対談をまとめながらふと、そんなことを考えていた。(N)