若きフォークナーの豊かさと面白さ

対談=諏訪部浩一×桐山大介

編集室から

「時と肉体から解放されていながら、死者には二人の老人のどちらよりもはるかに実在感があった」という印象的な冒頭から、登場人物たちの含蓄のあるせりふ、キズイセンやグラジオラス、サッサフラスやランタナやバラ、マネシツグミやオポッサムといった動植物、陽光や夕闇や月光のなかの風景に魅了されつづけることのできる長編小説である。サートリス家の男たちの人生と運命を見つめるミス・ジェニーとナーシサのまなざしには諦念が込められており、ところどころに現れる「平和の意味」や「静寂」という言葉を前にして不思議な感覚に包まれる。「かつてあったなどというものはない——いまあるだけだ」とフォークナーは語ったという。壮大なスケールで描かれたフォークナーの作品が諏訪部先生の研ぎ澄まされた日本語で読めることに感謝したい。(T)