
笑いと批評、生きるための実用書
対談=中島京子×矢内裕子
編集室から
はじめにいただいた大量のゲラに比べると「コンパクト」にさえ思えるが、それでもやはりこの厚み。読み始めるとお会いしたことのない橋本治さんの声がきこえ、お顔がちらちら浮かぶ。もともと本とは、自分から遠いものと繫がれる発明品だが、『人工島戦記』では著者側からその距離をぐいぐい縮めてくる。キイチやテツオたちと同世代の私には、著者に尻をたたかれながら、でも…でも…と逆説が、「デモ」になかなか繫がらないうだうだ感は身に覚えがある。ただ歩みは遅いが着実に進んでいく彼らを見ていると、もっと早くこの本が読めていたらなぁと思ったりもした。著者が距離を縮めてくれていても本にならなければ読めないので、美しい鈍器本を作ってくれた版元さんにも感謝だ。(S)