ヒトとウイルス、その“恐怖”の歴史―人類と感染症のかかわりをたどる

加藤茂孝著『人類と感染症の歴史』『続・人類と感染症の歴史』(丸善出版)

加藤茂孝(『人類と感染症の歴史』シリーズ著者、元国立感染症研究所室長)× 澤井 直(順天堂大学医学部医史学研究室・助教、『医学史事典』編集幹事)往復書簡


■<選書>【病気と社会の変容の歴史を知る三冊】


<加藤茂孝氏の三冊>


▽ジャレド・ダイアモンド、倉骨彰訳『銃・病原菌・鉄(上・下)』(草思社、二〇〇〇年)
人類史を動かした要因についての名高い著作。銃と鉄は古くから知られているが、そこに病原菌が並んで入る事を主張したところが画期的である。


▽澤田瞳子『火定(かじょう)』(PHP研究所、二〇一七年)
小説である。奈良時代七三七年の天然痘流行による混乱した社会情勢と不安におののく人間の心理を描く点で、どのパンデミックにも共通するリアリティがある。この流行は、今でも麻疹の可能性もあるとされている。


▽ダニエル・デフォー、武田将明訳『ペストの記憶』(研究社、二〇一七年)
一六六五年の英国におけるペスト大流行の詳細を、当時の公文書や個人記録を基に再現した小説であるが、パンデミックの拡大と対策に関する貴重なドキュメントである。アルベール・カミュ『ペスト』と並ぶ名著。


<澤井 直氏の三冊>


▽石坂尚武『苦難と心性 イタリア・ルネサンス期の黒死病』(刀水書房、二〇一八年)
膨大な先行研究と同時代の史料の緻密な分析から、一三四八年から始まる黒死病の流行という圧倒的苦難が人間の心性に与えた影響を描く。


▽鈴木則子『江戸の流行り病 麻疹騒動はなぜ起こったのか』(吉川弘文館、二〇一二年)
江戸時代の麻疹に関して、流行の状況や当時の医療での麻疹の捉え方、救済策などを扱う。特に、麻疹に関する書物や絵などの出版物についての分析から、当時の医療情報のあり方が明らかにされている。


▽アルフレッド・W・クロスビー、西村秀一訳『史上最悪のインフルエンザ 忘れられたパンデミック』(みすず書房、二〇〇九年)
一九一八―二〇年に世界的に流行し、急速に人々の記憶から消えていったスペイン・インフルエンザを再注目させたとされる書。クロスビーも、加藤茂孝先生が引用された寺田寅彦の言葉を肝に命じるべき言葉としている。

(書影クリックで出版元HPへ)
*加藤茂孝氏の著書『続・人類と感染症の歴史』の一部をウェブで無償公開。
加藤氏による、新型コロナウイルス(COVID-19)の最新コラムも掲載中である。
https://www.maruzen-publishing.co.jp/info/n19784.html