死を招くファッション 服飾とテクノロジーの危険な関係
著 者:Alison Matthews David (安部恵子 訳)
出版社:化学同人
ISBN13:978-4759820140

ファッションの犠牲者の物語

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

落合 智美 / TRC 仕入部
週刊読書人2020年6月5日(3342)号


「19世紀~20世紀前半の危険なファッション」に関わった労働者と消費者がいかに苦しめられてきたか、科学技術がもたらしたその悲劇が語られる。水銀の使われたシルクハット、鉛入りのフェイスパウダー、燃えやすい素材で作られたバレリーナ衣装…。本書に書かれている様々なエピソードを読んでいると、美しく着飾ることへの虚無感さえ感じられてくる。しかしこの事実は、現代を生きる私たちにも決して無関係ではない。普段使う化粧品や衣服の素材が何であるか、深く考えたことがあるだろうか。めまぐるしく変わる時代の美意識に過剰に左右されていないだろうか。衣服を作る過程で労働者の健康が犠牲にされている面があることを考えたことがあるだろうか。もちろん好きな恰好やメイクをし、自己を表現することは否定されるべきではない。だが、過去の負の遺産を繰り返さないためにも、合理性のないカテゴライズに縛られないこと、科学的な正しい知識を持つことが現代の私たちにも求められている。