図書館の日本史
著 者:新藤透
出版社:勉誠出版
ISBN13:978-4585200673

本が集まる場所は、変化を必然としながら、
常に在り続けるという事実

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

横川 昌代 / TRC 物流管理部お客様係
週刊読書人2020年6月5日(3342)号


最寄りの駅ビル内の書店で出会った1冊。物の始まりの辞典や日本の食文化史といった本が並ぶ書棚に置かれていた本書は、「日本の図書館」のルーツを探る。人々が思い描く「日本の図書館」のイメージから一歩引いた眼差しで、新しい事実として眺めたときの「日本の図書館」を発見する面白さを私たちに教えてくれる。  本書は序章で現代の「日本の図書館」に視点を置く。現代の図書館の一般的なイメージや、辞典が解説する図書館、図書館法の定義する図書館について、偏りなく平易な言葉で解説。そして時代を古代へと一気に遡り、「古代」「中世」「近世」「近代」各時代の図書館を追う。日本史の年表に並ぶおなじみの出来事と同時代の図書館を重ね合わせながら、図書館がその時代になければならなかった必然性を、先行研究を含む多くの参考文献に基づき丁寧に検証していく。  寺院が経蔵を備え多数の蔵書を管理しなければならなかった目的は?徳川家康はなぜ出版事業を行ったのだろう?江戸から明治の変革期に、前近代の日本の図書館ではなく西洋の図書館をモデルとして導入することにしたのはなぜ? 日本の歴史上に図書館を並べ俯瞰することで、「古代から現代に到るまで、図書館が日本人に必要とされ続けてきたのはなぜか」というテーマが鮮やかに浮かび上がる。同時に、現代の図書館で提供されているサービスや図書館運営の悩みは、時代を遠く遡っても、根本にそれほど変わりがないことにも驚く。  著者の専門は「図書館情報学」と「歴史学」。学生時代日本史に強い興味を持った著者は、通史概説書を恩師に紹介してもらったエピソードをあとがきに記しているが、誰にでもわかりやすく読まれることに、隅々まで心を配った著者の思いは、本書の作りによく表れている。章ごとに「まとめ」と参考文献を置き、日本の歴史を追う中で読者が迷子にならないように導く。巻末には「人名索引」「書籍・新聞・雑誌索引」があり、深夜に難儀なレファレンスを徳川吉宗に下され愚痴をこぼす奉行の様子や、村人に書物を無料で貸し出していた野中家の「蔵書の家」の貸出状況階層別一覧など、読者がその先を探りたくなった際の道筋を示し、読者の「もっと知りたい」を諦めさせない作りになっている。  日本史の年表に図書館を置きフラットに眺めてみると、古代から現代に到るまで図書館が在り続けているという事実は、「図書館はなぜ必要なのか?」という問いに対する答えのように感じる。本書を図書館に置くならば、日本十進分類法で分類し、「010(図書館、図書館学)」の棚に並ぶことが多いのではないかと思うが、本書に出合った書店では、「文化人類学」をテーマに、自由に楽し気に集められた書棚に置かれていた。どこで出会おうとも、本がある場所は相互補完しながら、時代を超えて脈々と続く。本書が示した歴史の事実は、本に関わるすべての人々へ、信じてもよい希望であると勇気づけてくれる。