オーデュボンの鳥 『アメリカの鳥類』セレクション
著 者:ジョン・ジェームズ・オーデュボン
出版社:新評論
ISBN13:978-4794811387

手彩色で描かれた多様な鳥たちの姿

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

池田 和弥 / TRC 仕入部
週刊読書人2020年6月5日(3342)号


画家・博物学者のジョン・ジェームズ・オーデュボンが1827年から11年もの歳月をかけて完成させた全435点の博物画集『アメリカの鳥類』。天地約1m、左右約70cmの大紙面に手彩色版画により多様な鳥たちが実物大でいきいきと描かれている。完全版は世界に約120セットしか現存せず、2018年にはクリスティーズ主催のオークションで初版本が10.6億円で落札され、世界一高値のつく本の一つとして今もなお出版史上に名をとどろかせている。また、同年公開の映画『アメリカン・アニマルズ』は、2004年に4人の学生がこの画集をケンタッキー州のトランシルヴァニア大学の図書館から盗み出そうとした実話に基づいている。古くは幕末にペリーが浦賀に来港した際の将軍へ贈った中のひとつであったとも言われているほどのものである。
 
本書「オーデュボンの鳥 『アメリカの鳥類』セレクション」は、原書の全435点の中から厳選された150点を、コンパクトなA5サイズ、オールカラーで紹介する。各図の制作順配列の原書の構成とは異なるテーマ・シーン別(「消える種」「養」「狩」「野」「空」「水」「森」)編集・配列とすることで、自然環境の破壊を憂いその保護を主張した作者の想いにより沿った形で見ることができるとも言えるのではないだろうか。また、巻末には紹介した鳥たちの実物写真つきの簡潔な解説や索引も完備されており、鳥類愛好家、美術愛好家の方々はもちろん、生物多様性やアメリカ史に関心のある方々にとっても有益な図書となることであろう。
 
現在、日本国内で唯一原書を所蔵している明星大学図書館蔵の『アメリカの鳥類』をもとに復刻されたオリジナルサイズのファクシミリ版(丸善雄松堂発売)の他には見ることは難しく(ただし、とても高額である)、本書の刊行によってコンパクト版とはいえ手軽に見ることが出来るようになったのはうれしい限りで、あわよくば全435点のコンパクト完全版の刊行を期待したいものである。