童謡名曲事典
著 者:長田暁二
出版社:全音楽譜出版社
ISBN13:978-4-11-880235-0

童謡を通して浮かび上がる日本の姿

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

辻和人 / TRC 仕入部
週刊読書人2020年5月15日号(3339号


キング、テイチク、ポリドールなどでディレクターとして活躍し、日本の音楽の発展に尽くしてきた著者による渾身の童謡事典。収められた曲は162曲。「からたちの花」のような戦前の名曲から、「だんご3兄弟」のようなテレビ番組から生まれたポップスまで、バランスの取れたバラエティに富んだラインナップであり、そのそれぞれについて、歌詞と楽譜を載せ、歌が生まれた背景や歌詞の意味を詳述している。童謡について何か調べたい時の参考書として最適であるが、それ以上に読み物としてすばらしい。例えば「赤蜻蛉」(三木露風作詞/山田耕作作曲)は、作詞した詩人が育った環境を述べた上で「露風のノンフィクション的な思い出を詠った、男尊女卑時代の悲歌(エレジー)です」と解説される。ああ、そうだったのかと、目からウロコが落ちる想いがした。本書は、童謡を通して近現代の日本の姿を知ることのできる、音楽の事典であり詩歌の事典であり、同時に歴史の事典なのである。