香港はなぜ戦っているのか
著 者:李怡
出版社:草思社
ISBN13:978-4-7942-2445-3

香港人としての「本土意識」

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

辻和人 / TRC 仕入部
週刊読書人2020年5月15日号(3339号)


香港の民主化デモの様子はテレビでもよく放映された。警察と市民が激しく揉みあう様に、息を飲んだ人も多かったのではないだろうか。投石もあったし、死者も出た。本書はそんな香港のデモの背景を解説したものである。香港が中国に返還される以前から、香港人は独自のアイデンティティを持っていた。英国人でも中国人でもなく、あくまで香港人だと自認していた。この「本土意識」は、中国共産党への反発とともに高まり、中国と鋭く対決するようになっていく。が、中国は支配の手を緩めず、一国二制度を有名無実化させていく。民主化運動は起こるべくして起こったのだ。著者は香港在住70年のジャーナリスト。歴史的経緯を記すだけでなく、香港人の心の奥深くに潜り込んで民主化運動の全容を伝えてくれる。同じく中国化に抗う台湾への言及も切迫感がある。香港を知る上で、そして東アジア情勢を知る上で、重要な一冊となりそうだ。