アノマロカリス解体新書
著 者:土屋健
出版社:ブックマン社
ISBN13:978-4-89308-928-1

カンブリア紀の覇者が気になる

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

半澤祥子 / TRC データ部
週刊読書人2020年5月15日号(3339号)


今から5億2000万年前の古生代カンブリア紀の海を泳ぎまわっていた生物、アノマロカリス。小説家の村上龍とゲストの経済人によるトークTV番組「カンブリア宮殿」のオープニング映像で一瞬映る、不思議な生物のアニメーションを見たことがあるだろうか。その映像の一つに、本書の主人公アノマロカリスがいる。
 
著者の土屋健は科学雑誌『Newton』の編集記者でもあったサイエンスライターで、古生物関連の著作も多い。この本はアノマロカリスに関する情報を集約させ一般向けにまとめた一冊。分かりやすい文体で、研究の経過や名前の変遷などが丁寧に説明されている。おなじみの学習図鑑やコミック、アニメーションの中にアノマロカリスが登場した例も紹介されていて楽しい。エビのモンスターの様なその見た目はキモカワいさもあいまって、漫画に出現させたくなるのもうなずける。動物画家のかわさきしゅんいちによる作画で本のあちこちにアノマロカリスとその他の古生物の絵を見ることができ、想像力をかきたてられる。
 
ところでこの生物は、私がダンゴムシぐらいかと想像していた大きさよりもかなり大きく、最大で1メートル級とのこと。生命史上初の本格的なハンターと書かれており、海では絶対に会いたくない。
 
スティーヴン・ジェイ・グールド著「ワンダフル・ライフ-バージェス頁岩と生物進化の物語-」(ハヤカワ文庫NF)を読んだ時、カナダのバージェス頁岩で発掘された化石から、アノマロカリスを始めとするカンブリア紀の多様な生物を復元していく様子にとても驚いた。ものすごい圧力でぺしゃんこになった化石から、生物を立体に起こす作業は想像を絶し、その生物たちのビジュアルの強烈さも忘れられない。本書ではそのバージェス頁岩にも触れながら、アノマロカリスの姿が判明し、その名前を獲得していくまでの復元史にもページが割かれている。そして研究が進み新たな発見があるにつれて整理されていく130年ほどの経過はとても興味深い。現時点で判明している最新の情報から振り返ると、2000年刊の「ワンダフル・ライフ」が書かれた時の情報も、過去の経過の1つとなることが分かる。
 
2019年春までの情報を基準として書かれており、アノマロカリスの最新情報を知るには最適。虫を見てはギャッと逃げる娘にも読ませたい。