QRコードの奇跡 モノづくり集団の発想転換が革新を生んだ
著 者:小川進
出版社:東洋経済新報社
ISBN13:978-4-492-53419-9

QRコード誕生物語と普及戦略

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

大谷満奈美 / TRC 人事部
週刊読書人2020年7月3日号(3346号)


四角い模様に目がついたような不思議なマーク。QRコードそのものは前からあったと思うが、近年とくに意外な用途で広がっているようだ。「詳しい情報はこちら」といったwebサイトへの誘導にとどまらず、出退勤管理や電子マネーの決済、駅のホームドアの開閉にも使われているというから、今や社会インフラのひとつである。従来のバーコードとどう違うのか、広く使われるようになった戦略とはどんなものなのだろう。
 
QRコードは、トヨタ自動車へ部品を供給する株式会社デンソーで開発された。まずトヨタ生産方式で使われている「かんばん」に一次元バーコードを印刷し、煩雑になっていた部品の検品作業や伝票発行を効率化するしくみを作った。車種や部品が多種多様になってくるとバーコードより多くの情報の搭載が必要になり、二次元コードに取り組むことになる。世界企業トヨタが相手なら海外工場でも使えるようにする必要があり、国際標準化を目指す。工場の油で汚れていても素早く正確に読めること、様々な形態のものに印刷できること、広く使ってもらうための努力を惜しまないといった、バーコードで得た学びがQRコードの物語に引き継がれ進化する。
 
本書は、ひとりのヒーロー的な人物をクローズアップするのではなく、各開発段階でのキーパーソンを丁寧に追っている。バーコードに始まり二次元コードの開発、社外への普及、国際標準化、市場開拓というそれぞれの役割を担う社員が力を発揮し、連携しながら次のステップに仕事をつないでいく。会社の仕事とは、こういうものかと再認識させられる。QRコードの特許を無償開放することで普及を進め、ユーザーに新しい用途を発見してもらうといった考え方も新鮮だった。人や企業のつながり、気づきやヒントのつながりが後に効いてくる。ゴールに向かってボールを回しながら走るラグビーに例えた、ラグビー型経営という考え方があるそうだ。
さて、QRコードの模様だが、実際は、細かい方眼を埋める白黒の配置である。三つの目に見えるのはコードの読み取りをしやすくする目印で、ここにも秘密がある。どれも同じような白黒模様だったものが、読後は、いくつもの知恵とストーリーに見えてくるはず。