気くばりのすすめ 最終版
著 者:鈴木健二
出版社:さくら舎
ISBN13:978-4-86581-242-8

「気くばりのすすめ」集大成

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

野村隆之 / TRC データ部
週刊読書人2020年7月3日号(3346号)


本書は「気くばりのすすめ 最終版」となっているが、手に取ったときは、ベストセラーになった「気くばりのすすめ」の「改訂版」または「令和版」かと思った。ただ、読み進めていくうちに、「続々(編)」であり、また「昭和のよき社会史」、いや、「よき時代の社会史」でもある、と思うようになった。
 
著者である鈴木健二は、昭和生まれの世代で知らない人はいない、国民的アナウンサーである。「昭和のよき社会史」だけでなく、司会を三回された「紅白歌合戦」や「クイズ面白ゼミナール」、「こんにちは奥さん」、NHKのニュースなど、鈴木健二ならではのNHKの放送史の裏話も知ることができる。そして、これらの番組での経験を通して「気くばり」について述べている。たとえば、TVのバラエティ番組などでの出演者の品のない言葉が伝播し、日本人の言葉づかいが低下している、という指摘には納得した。
 
個人的に特に気になったのは、第一章の「小学校で英語を教える時間があるなら介護を」である。小学校などでの英語教育が低年齢化する中で、介護は道徳の徳目の第一とし、英語はやめて介護の仕方を知るために、障害者や高齢者と接することが出来る所へ行った方がいいのでは、と述べている。また、同章に「生命誕生の感激」があり、若い看護師の話が書かれている。それらのエピソードを通して、誕生から死までの人との関係、そして、想いについても考えさせられた。
 
「気くばりのすすめ」は一九八二年、「気くばりのすすめ 続」は一九八三年に出されているが、私が読んだのは「気くばりのすすめ」の文庫本で二十年以上も前のこと。「続」は読んでいなかったので、同タイトルの三冊の読み比べができないが、おそらく著者にとっては集大成の三部作といえるのではないだろうか。
 
「気くばり」という言葉は著者の会話にしばしば登場した「気くばり」から、編集者が書名に思いついたそうである。どの年代の方が読まれても、うなずかれたり、胸にぐっと来たりする部分があると思うが、鈴木健二のことを知らないような、若い世代の方にこそ読んでいただきたいと思う本である。